韓国では失業率や所得格差の拡大によって経済的弱者に追い込まれた結果、仮想通貨で人生逆転を夢見ている若者が激増しています。「どうせまともな仕事には就けない」と、なけなしの金をビットコインにつぎ込んでいるのです。
今回は隣国のビットコイン狂騒曲の現状について紹介し、日本国内のFXトレーダーにも警鐘を鳴らしておきたいと思います。
世界一熱い韓国の仮想通貨ブーム
仮想通貨元年といわれた2017年、世界のどこよりも熱かったのは韓国でした。この年の年末時点の仮想通貨市場取引の3分の1は韓国だったそうです。そんな韓国では、とくにビットコインの人気が高く、他国と比べて価格が高値に設定される傾向があります。いわゆる「キムチ・プレミアム」と呼ばれる韓国独特の価格設定です。
韓国の仮想通貨ブームは若い世代が牽引しています。一攫千金を狙う若者や、結婚準備やマイホーム購入のためのまとまった金を作ろうとする20~30代の層が、仮想通貨市場に殺到しました。
ビットコインにのめり込む韓国の若者
ビットコイン・ゾンビとは
韓国の青年層が仮想通貨に入れ込む背景として、所得・貧富など社会格差の拡大、機会の不平等、相対的剥奪感があります。若者たちの間には、様々な社会的問題を解決するよりも、現実から逃げようとする空気が広がっているのです。
就職をあきらめて金と時間を仮想通貨につぎ込む若者たちを、韓国では「ビットコイン・ゾンビ」と呼んでいます。預金をすべて吐き出す者や、銀行から融資を受けて仮想通貨に投資している若者もいて、大きな社会問題になっています。
無知が地獄を見るパターン
仮想通貨取引所を運営する企業に「1万KRWとは何ウォンなのか?」と問い合せをする若者がいたといいます。「KRW」とは韓国の通貨単位(韓国ウォン)のことですが、それすら知らずに仮想通貨を始める若者がいるというのですから、驚きを通り越して呆れてしまいます。
このような若者が手元資金を失うのに、ほとんど時間はかからないでしょう。
ネット情報でさらにヒートアップする
YouTubeでは「口座開設3か月で1,500万KRWを18億KRWにした医者」「ビットコインで100億KRW稼いだ大学生」といった真偽不明の情報が流され、「超簡単!年率46%自動収益の作り方」といった類いの、いかにも一攫千金を夢見る若者が食いつきそうなタイトルの情報商材が売られています。これらが若者の投資ブームにますます拍車をかけています。
2021年5月19日
この日、ビットコインをはじめとする主な仮想通貨が一時30%以上暴落しました。暴落当日、韓国国内のオフィスビルのトイレや喫煙区域は、スマホで相場を確認するサラリーマンで、どこも大混雑になったといわれています。ちょっと日本では考えられない異常な状況です。
ちなみに、ビットコイン相場は過去にも大きく変動したことがあり、2018年には中国政府の規制により1か月間で4分の1になる大暴落を経験しています。
韓国人がビットコインにハマるつの原因
国内の不安定な経済事情
若者の失業率の高さが深刻な問題となっています。階層的な矛盾や生活費の高騰などの社会問題も悪化の一途をたどっているなかで、韓国の若者の目には、仮想通貨投資は出口の見えない泥濘から抜け出し、一攫千金の利を得るための、またとないチャンスのように見えるのでしょう。
電子技術に精通する若者
韓国では電子決済などの最新技術を早期に導入し、社会ネットワークからビデオゲームまで多岐にわたるサービスに技術を応用することにも長けています。
モバイル決済システムを促進する環境が整っていることも、仮想通貨取引が盛んに行われるようになった理由であると推察されています。
わたしたちが韓国の若者を反面教師にするために
異常ともいえる韓国のビットコインブームの問題点は2つあります。
ひとつは、かれらが身の程以上の投資を行っていることです。預金のほとんどを投資につぎ込んだり、ひどいケースでは借金してまでビットコインに投資している例が見られます。もうひとつは無知によるものです。YouTubeなどで本当かウソかわからないような情報に踊らされ、トレードのルールや知識もなく始めて大失敗するケースが少なくないのです。
借金を苦にした自殺も増えていて社会問題化していますが、歯止めが利かないのが現実のようです。
いずれにしても「一攫千金」という危険な発想が地獄への入り口になっていることを、われわれFXトレーダーも理解しておきたいところです。
コメント