FXを取引する際には、たびたび「レバレッジ」「通貨単位」という言葉が出てきます。これらは取引する際の単位を表す重要な用語です。FXが現在の2つの取引単位に至るまでには変遷があります。それらの背景を知ったうえでトレードを開始することによって、見えてくるものもあるのではないでしょうか。
FXトレードは「まとめ買い」「まとめ売り」が基本
FXで使用される「通貨単位」という用語は、取引する際の通貨の最低数量を指しています。その最低数量単位を1ロットといいます。「まとめ買い」「まとめ売り」取引が基本のFXでは「1ロット=1万通貨単位」「1ロット=10万通貨単位」といったロット単位が設定されています。
かつては、ほとんどのFX会社で取引通貨単位は「1ロット=1万通貨単位」と定められていました。つまり、日本円の場合は1万円、ドルの場合は1万ドル、ユーロは1万ユーロを最小単位として取引が行われていました。
現在は「1ロット=1,000」「1ロット=100」「1ロット=1」といった小さなロット設定をしているFX会社もあります。
レバレッジの変遷
現在よりもスリリングだったかつてのFX市場
その一方で、かつてのFXトレードは100倍とか200倍といった大きなレバレッジをかけることが可能でした。そのため、少ない資金でも大きな掛金の取引が可能でした。
1ドル100円で10万通貨単位(10ロット)を取引する場合に、レバレッジをかけない(レバレッジ1倍の状態)で取引する場合、(100×100,000=10,000,000)で1,000万円の証拠金が必要でした。
しかし、レバレッジをかければ格段に少ない資金での取引が可能です。レバレッジが200倍であれば、(100×100,000÷200=50,000)で5万円の証拠金があれば上に挙げたケースと同様の取引ができたのです。
投機性の高いFXに金融庁の規制のメスが入る
株取引では、信用取引によるレバレッジは最大3.3倍ほど、銘柄にもよりますが、現物取引の場合は最低でも50万円ほどの資金が必要だといわれています。株と比較した場合、FXははるかに大きなレバレッジがかけられることから、俄然注目が集まりました。
一攫千金を狙うトレーダーが大きなレバレッジをかけて取引をし、その結果、大きな損失を抱えたりFX会社に借金を背負うトレーダーが出てきたことから、金融庁がレバレッジ規制に踏み切り、レバレッジ25倍が上限となり、現在に至ります。金融庁にはさらなる規制強化の構想があるようで、レバレッジを10倍まで引き下げるという報道も出ています。
レバレッジ200倍と25倍ではこんなに違う
レバレッジが25倍に制限された結果、上記の例でいうと、(100×100,000÷25=400,000)で40万円の証拠金が必要になります。レバレッジ規制前のレバレッジ200倍では5万円の証拠金で取引できたものが、レバレッジ規制後は40万円の証拠金が必要となってしまったというわけです。
通貨単位の変遷
レバレッジ規制によって投機性が小さくなった結果、顧客のFX離れが指摘されるようになりました。そこで客離れを回避するため、ハードルを下げて新規参入しやすい方向へと、FX業界の流れが変化していきました。
それまでの1万通貨単位から千通貨単位の取引へと、通貨単位を下げるFX業者が増え、それよりさらに小さい100通貨単位や、中には1通貨単位での取引ができるFX会社も少数ながら出てきています。
レバレッジと通貨単位の違いから生まれる影響
レバレッジと通貨単位が小さくなったことのメリット
レバレッジの縮小によっても、証拠金にはほとんど差は生じません。
1ドル100円で千通貨の取引をする際に必要な証拠金額は、
レバレッジ25倍であれば(100円×1,000÷25=4,000)となり4,000円です。一方でレバレッジ規制前の200倍の高レバレッジのケースでは、(100×10,000÷200=5,000)となり5,000円です。このように、取引する数量は異なりますが、規制前とあまり変わらない証拠金で取引できることがわかります。
また、取引通貨単位が千通貨に引き下げられたことによって、損失が生じた場合には金額が小さくて済むという点もメリットです。
レバレッジと通貨単位が小さくなったことのデメリット
マイナスが生じた際に損失を小さく抑えることができますが、裏を返せばプラスの際には利益も小さくなるという意味です。1万通貨と千通貨の比較では、千通貨で1万通貨と同様の利益を達成するまでに長い時間がかかってしまうのがデメリットです。
また、スワップはロット数に応じて付与されますから、通貨単位数の違いは当然ながらスワップにも大きく影響してきます。
資金が同じでも通貨単位が小さいほうが多くトレードできる
資金100万円でFX取引をする場合を想定しましょう。(1ドル=80円)とします。
1ロット1万通貨単位の場合は、資金100万円に対してドルを80万円分しか購入することができませんが、1ロット千通貨単位であれば、ドルを96万円分購入できます。要するに「割り切れない端数が発生するから」このような差が生まれます。
同じ資金で取引する場合であっても取引通貨単位数が小さいFX会社で取引する方が、より大きな数の通貨を購入することが可能だということです。
利益が発生した場合により大きな利益を得ることができますが、当然ながら、損失が発生した場合はより大きな損失を被る可能性があります。このことも常に念頭に置きましょう。
勝つためにレバレッジと通貨単位をコントロールする
大きな通貨単位は短期トレード向き
短い時間で大きな利益を得られることから、大きな通貨単位のトレードはスキャルピングに向いています。スキャルピングで取引回数を抑えて取引する場合は、その分リスクも大きくなりますが、短い時間で利益を出すことも可能です。
初心者は通貨単位を低く抑えてトレーニングに活用
現在は千通貨単位だけでなく、100通貨単位や1通貨単位での取引が可能なFX会社もあります。トレード初心者がFXに慣れるための練習としてデモトレードを活用する方法もありますが、仮想通貨でうまくいっても実際のお金を使って取引した際に冷静な判断ができなくなるというケースも多いようです。
したがって、FXの実戦的トレーニングとして、少額のトレードで学習しながらレベルアップする方法がおススメです。
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