初心者がすぐに理解することは難しいかもしれませんが、FX取引は「買い」からも「売り」からも始めることができるため、通貨ペアの「買いポジション」と「売りポジション」を同時に保有する「両建て」という売買手法を使うことができます。
常識的に考えれば、ほとんど意味がないようにも思えるのですが、両建てにはいくつか利点もあるようです。
両建てとはなにか
FX会社は推奨していないことが多いのですが、FXには両建てという売買テクニックがあります。両建ての本質は「為替変動のリスクを和らげる」ことにあります。
為替相場が急変すると、為替レートは急上昇か急落という極端な値動きをします。すると必然的に「買い」であろうと「売り」であろうと、現在のポジション次第で大損するおそれが高まってしまいます。
しかし同じ通貨ペアに対して「買い」「売り」両方のポジションを持っていれば、どちらの相場になっても損失をカバーすることが望めます。また、それぞれ異なるポジション数を保有している場合に損失よりも利益のほうが上回っていれば、単純にマイナスを相殺するだけでなく利益を確保することも可能です。
両建てのメリット
為替相場に急変に対するリスクヘッジ
為替相場は予測のできない世界です。プロのトレーダーであっても完全に相場の動きを把握することはできません。両建ては為替相場の急変に対する対応策として、おもに上級トレーダーが利用するケースが多いです。
少ない証拠金で取引できる
両建てで取引をする際に、必要証拠金を片方のポジション分のみとしているFX会社が存在します。このような証拠金のシステムを「両建てマックス方式」ともいいます。かりに、このように保有数に差があるポジションを例にしましょう。
買いポジションを2,000通貨 売りポジションを1,000通貨
両建てマックス方式では、保有数の多い買いポジションのみに必要証拠金を適用します。
一部のFX会社は両建てマックス方式を適用しておらず、両建てする際に「売り」「買い」ポジションそれぞれに証拠金が必要とする場合があるので、事前に確認しておきましょう。
税金対策にもなる
年末に含み益のあるポジションを保有している時、ポジションを決済してしまうと年間の収支がプラスとなって税金が発生することがあります。
利益を翌年に持ち越したいが為替リスクも避けたいという場合に、両建てで反対のポジションを同時に保有すれば、含み益という形で翌年への持越しが可能になります。
両建てにはこのような使い方がある
両建てのメリットは、相場が一方的に動いても損失を防ぐことができることにあります。
同一通貨ペアで「売り」「買い」同じ数量のポジションを保有していれば、理論上は決済している状態と同じですが、株価が上昇した場合は、買建てしていたポジションを決済して利益を確定します。この時点で売建てのポジションは、損失を抱えることになりますが、その後株価が下がったときに売建てのポジションを決済することによって利益を得ることができます。
具体的な使い方を一例紹介しましょう。
①「1ドル=120円」×1,000通貨の買いポジションを現在保有している ②相場が「1ドル=100円」になり、含み損は「20円×1,000通貨」で2万円になる ③その後「1ドル=110円」に回復したタイミングで売りポジションを1,000通貨持つ ④すると売りポジションの含み益が「10円×1,000通貨」で1万円になる ⑤その結果、「買いの含み損2万円-売りの含み益1万円」でトータル損失は1万円になる
ただし、持ち越している間に為替が急変動してせっかくの含み益が含み損になるリスクもあります。その場合は両建てで持ち越そうとしている逆ポジションを保有してリスクヘッジを行います。
両建てのデメリット
取引経費が2倍かかる
両建てでは、取引を行う際にかかるコストが増え損益が出やすくなります。
「売り」「買い」両方のポジションを保有することで、両ポジションのスワップポイント差を毎日払わなければなりません。とくに長期的にポジションを保有するとトータルのコストが大きくなるので注意したいところです。
また、取引をする際にかかるスプレッド(為替レートの売値と買値の差)も両建て取引では2倍かかるため、取引回数を重ねるにつれて損益に影響を及ぼします。
ロスカットの危機が高まる
為替の急激な値動きがあるとスプレッドが拡大します。早朝の流動性の低い時間や相場急変時には評価損が増えて、ロスカットが発生するケースが増えてきます。
両建ては知識として覚えておけば充分
両建ては必ずしもトレーダーが使わなければいけない手法ではありません。とくに初心者についてはまったく使う必要はありません。実際のところ、取引経費が大きくなるというデメリットが大きすぎるので、知識として覚えておけばOKです。
冒頭で言及したように、ほとんどのFX会社は両建てを推奨していません。両建てを禁止している会社もあるので、利用する前に忘れずにチェックしてください。
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