英国ポンド」正式名は「スターリング・ポンド(sterling pound)」といい、グレートブリテンポンド(Great Britain pound)の頭文字を取ってGBPの略称が用いられています。
英国は共通通貨のユーロを採用せず、EU(欧州連合)からも離脱し、多くの欧州諸国とは異なる路線を進んでいます。その法定通貨である英ポンドの特徴をかいせつします。
英ポンドの基本情報
かつては大英帝国を象徴する基軸通貨
英ポンドは、イギリス(正式国名はグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(UK=United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)の法定通貨です。
イギリス帝国は世界的に絶大なる権勢を誇り、英ポンドはイギリス連邦諸国での流通にとどまらず、基軸通貨として国際的な決済にも広く用いられていました。正式名称である「スターリング・ポンド」は「純銀製のポンド」を意味していますが、これはかつての銀本位制の名残です。米ドルを表す記号が「$」であるのに対し、英ポンドは「£」で、「Libra(天秤)」というラテン語の頭文字に由来しています。
世界基軸通貨は英ポンドから米ドルに
第二次大戦後、アメリカの台頭により、英ポンドは力を失っていきました。現在、英ポンド貨幣の流通量は米ドルやユーロ、日本円と比べても少なくなり、取引に占めるウエートは低くなりました。
英ポンドは投機の対象に
英ポンドは投機の対象となることが多く、他の先進国通貨と比べると価格変動が大きくなりやすいという特性があります。
1992年9月には「ポンド危機」と呼ばれる大混乱も発生しました。ジョージ・ソロス氏をはじめとするヘッジファンドが英ポンド相場が実勢と比べてかなり割高であることに着目して、大量の売りポジションで勝負を仕掛けたのです。
これに対して、英国中央銀行は巨額の為替介入に踏み切るとともに、1日のうちに2回にも利上げを実施して5%も金利を引き上げて対抗しましたが、投機筋の売りは強烈で英ポンドは暴落し、その翌日に英国は欧州為替相場メカニズム(欧州の為替の変動を抑えるスキーム)からの離脱を余儀なくされるという苦い経験をしました。
英ポンドの取引のポイント
初心者向きとはいえない理由
値動きが大きくなりやすいという英ポンドの特徴から、初心者がいきなりチャレンジするには少々ハードルが高いといえるでしょう。相場の急変に対応して臨機応変に利益確定や損切りを行う必要があるため、それなりにFXの取引に慣れているトレーダーでないとチャレンジは難しいでしょう。
EU離脱(プレグジット)の影響は今後も続く
英国は2020年1月31日にEUを離脱(ブレグジット)しましたが、離脱時期が3度も延期されたため、英ポンド相場もこうした動きに翻弄されました。EU離脱に関する国民投票や議会選挙が実施された直後も英ポンド相場は大きく変動しました。EU離脱で表面化したスコットランドの独立を巡る動きについても、引き続き注意を払ったほうがよさそうです。
金融政策や経済指標の発表にも注意しておきたい
ブレグジットの行方に加えて、英ポンド相場には英国の金融政策や政治経済の情勢も影響を及ぼします。英国中央銀行は年8回のペースで金融政策委員会を開催しています。FXトレードを行う際にはその動向をチェックすることが基本になるでしょう。
四半期ごとに発表されるGDP(国内総生産)やインフレレポート、毎月中旬に発表されるCPI(消費者物価指数)や失業率、失業保険申請件数、小売売上高、毎月下旬に発表されるCIPS製造業PMI(購買担当者景気指数)などといった経済指標の結果も見逃せません。
英国が産油国であることにも注目する
英国は北海油田を有する産油国ですから、原油相場が英ポンドに影響を及ぼす可能性も考慮しておきましょう。
英ポンドの値動きが活発になる時間帯
ロンドン市場は世界の外国為替市場で最も取引量が多い市場です。ロンドン市場がオープンしている時間帯には、(英ポンド/米ドル)や(英ポンド/ユーロ)はもちろん、(英ポンド/円)の相場も活発に動きます。ウインタータイム(冬時間)では日本時間の17〜翌2時、サマータイム(夏時間)では日本時間の16〜翌1時の動きに注目しましょう。
日本時間の深夜帯を過ぎると、次第にボラティリティ(価格変動率)が低下していくという傾向があります。この時間帯に形成されたトレンドは、他の市場に波及しないことが多い点にも留意しておきたいところです。
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