チャートを漠然と見ていても、トレンドの始まりと終わりを知ることは難しいものです。
トレンドの解明をするために開発された分析方法に「エリオット波動理論」があります。多くのベテラントレーダーがチャート分析に取り入れている理論ですが、初心者としても学んでおきたいポイントがいくつもあります。
エリオット波動理論とは
エリオット波動理論は米国の経済学者ラルフ・ネルソン・エリオット氏が確立した分析理論です。元々は株から生まれた理論で、その後、FXでも使われるようになりました。
取引の心理的要素の影響を受けた結果、相場は単純な直線や緩やかな曲線ではなく、一定のジグザグの波動を発生させます。この波動の分析がエリオット理論の真髄です。
エリオット波動理論の考え方
エリオット氏は為替相場には作用反作用のメカニズムが働くと考えていました。
エリオット波動のチャートの基本は「推進波」と「修正波」という2種類の波動で構成されています。推進波は相場が進行する動力となる波で、上昇下降いずれの場合もあります。一方で修正波は推進波が終わったタイミングで価格を逆行して修正する役割をもっています。
エリオット波動の8つの波の役割
エリオット氏は「相場は5つの推進波と3つの修正波によって、ひとつの周期として成り立っている」という仮説を立てました。この周期は人間の集団心理によって繰り返されるとしており、数分から数年といった様々な時間軸で観察することができます。
エリオット波動理論は実はいたって単純
原則はたったの3つ
エリオット波動理論にはとっつきにくいイメージを持たれがちですが、基本原則は次のたった3つだけです。
・波動1・3・5の中で波動3が一番短くなることはない ・波動2が波動1よりも安値をつけることはない ・波動4が波動1の高値を下回ることはない
これらの原則をおさえればエリオット波動への理解は比較的深まりやすいと思います。5波動の推進波の次に3波動の修正波が来るという基本原則に則って、波動がいくつも重なるフラクタル構造(マトリョーシカのような入れ子状態)となってチャートを構成します。
波動の動きのメカニズム
推進波の5つの波は出てくる順番に1~5波と呼ばれています。波の構造をみると1波、3波、5波が大きな波となるアクション波、その流れを一時中断したり逆方向に戻す小さな波(2波、4波)をリアクション波と呼びます。
基本的な周期は1(アクション波)→2(リアクション波)→3(アクション波)→4(リアクション波)→5(アクション波)のワンセットです。これらの波の1つ1つがフラクタル構造になっていて、1波の中に更に5つの波が存在します。
修正波の場合も、波の呼び名がa波、b波、c波と変わります。a波(アクション波)→b波(リアクション波)→c波(アクション波)の一連の同じ動きによって価格を戻していきます。
エリオット波動理論の活用法
実際に波動のパターンをチャートの中に見つけた場合にどのような戦略を立てればよいかを考えてみましょう。
まず、エリオット波動は値幅や方向感の分析に役立ちます。したがって利益確定ラインや損切ライン、またそのタイミングを考える際の参考になります。ほかのテクニカル指標と組み合わせて使用すれば成功する確度はさらに高まるでしょう。
そのほか、エリオット波動を活用した典型的な成功パターンを紹介します。
3波の波に乗る
エリオット波動を用いた最もシンプルなエントリー方法は3波を捉えてエントリーする方法です。3波は全5波の中で最も上昇・下降する幅が大きく、大きな利益を狙いやすいというメリットがあります。
具体的なエントリーのタイミングは2波の途中、1波の高値(安値)を超えたタイミングです。したがって1波の高値(安値)を超えるかどうかはしっかりチェックします。決済のタイミングは3波の終盤がベストです。
4波の波に乗る
もうひとつのシンプルなエントリー方法は4波を捉えてエントリーする方法です。4波では3波と逆サイドの注文をすることにより下落(上昇)局面でも利益を狙えます。
ただし4波は3波に比べて値幅が小さいので、5波の推進波が来る前に決済することを忘れないようにしましょう。
エリオット波動理論は奥が深い
エリオット波動のイメージはつかめましたか?
プロトレーダーの中には、エリオット波動だけで相場のレジスタンスやサポートのポイントを見極め、売買を行っている人もいます。
エリオット波動理論が長い間多くのトレーダーから支持されてきた事実は、この理論が一定の市場予測に役立つということを物語っています。エリオット波動はどちらかというとFX上級者向けのテクニカル指標ですが、今回紹介した程度の内容については、初心者が知識として知っておくことは損にはならないでしょう。
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