南アフリカは1994年のアパルトヘイト廃止後から着実に経済成長を果たし、現在ではアフリカ大陸のGDPの約20%を占め、アフリカ第2位の経済大国としてアフリカ経済をけん引しています。今回は南アフリカの通貨「南アフリカランド」について解説します。
資源価格の影響を受けやすい「資源国通貨」
南アフリカは金やダイヤモンド、プラチナなどの鉱物資源を多く産出する世界有数の鉱山資源国です。南アフリカランドは資源国通貨と位置づけられ、鉱物資源の価格に影響を受けやすいという特徴があります。
南アフリカは経済の成長段階において中期に位置しています。南アフリカランドは今後も発展が期待できることから、流動性が低くなり、ボラティリティが高くなる傾向が見られます。
高水準の政策金利
南アフリカランドは高金利通貨としても知られています。南アフリカの政策金利は3.50%(2021年3月時点)で、トルコやメキシコなどと並んで高金利政策を採用している国として知られています。
南アフリカランドが注目される理由のひとつがスワップポイントです。(南アフリカランド/円)のスワップポイントは10万通貨あたり70円ほど(1日あたり)と、非常に高い水準にあります。
南アフリカ経済は慢性的な赤字体質
南アフリカはインフラへの支出などで恒常的な赤字体質にあります。資金調達を海外に依存していることから、グローバルな資金移動の影響を受けやすいのも大きな特徴です。
周辺国の影響にも注目
南アフリカ経済は周辺諸国の政情や経済環境の影響を強く受けるので、注意が必要です。
南アフリカの定期的な経済イベント
GDPは3か月ごとに公表される
GDPは南アフリカ統計局が四半期ごと(3.6.9.12月上旬)に公表します。GDPの数値が大きくなるほど景気の拡大を表し、一般的に南アフリカランドの上昇要因となります。
政策金利は奇数月の下旬に公表される
政策金利は南アフリカ中央銀行が原則奇数月の下旬に公表します。南アフリカは物価目標を前年比3~6%に設定しており、中央値の4.5%に向けて比較的頻繁に変更しています。
金利が高くなると南アフリカランドは上昇します。
消費者物価指数は毎月下旬に公表される
消費者物価指数は南アフリカ統計局が原則毎月下旬に公表します。この指数は南アフリカ中央銀行の政策金利の判断材料にもなっています。
物価の上昇は、南アフリカの景気拡大と受け止められる傾向がありますが、急激な物価上昇は通貨の下落要因になり得ます。2001年には隣国のジンバブエでハイパーインフレが起こり、南アフリカランドも暴落したという経緯があります。
SACCI景気感指数は毎月発表される
SACCI景気感指数は南アフリカ商工会議所が毎月上旬に公表しています。企業に景況感をアンケート調査し指数化したもので、この数値が大きいほど南アフリカ景気は良好とされ、南アフリカランドの上昇要因となります。
南アフリカランドの代表的な通貨ペア
南アフリカランドの代表的な通貨ペアは以下の5種です。
・南アフリカランド/円 ・米ドル/南アフリカランド ・ユーロ/南アフリカランド ・英ポンド/南アフリカランド ・豪ドル/南アフリカランド
このうち代表的な3つの通貨ペアについて解説しましょう。
南アフリカランド/円
南アフリカランドは高金利通貨です。円ペアの目的のひとつは「スワップポイント」として金利相当を受け取るパターンです。
2016年以降、「南アフリカランド/円」は概ね横ばいで推移していますが、長期的に見ると下落トレンドにあります。したがって、高いスワップポイントを上回る損失の可能性もあることに注意しましょう。この通貨ペアは少額からのトレードが可能です。
「米ドル/円」であれば約4,000円の資金が必要(1,000通貨)ですが、「ランド/円」であれば、その10分の1以下(約300円)から投資ができます。
米ドル/南アフリカランド
米ドルは円と比較すると金利が高いので、スワップポイントは円ペアより少なくなります。
また「米ドル/南アフリカランド」は南アフリカランドの他の通貨ペアと比較すると値動きが大きいため、スワップポイント狙いの長期トレードよりも短期トレードに向いています。
ユーロ/南アフリカランド
「ユーロ/南アフリカランド」は比較的値動きが小さいペアです。ユーロも円と同じく低金利通貨なので、スワップポイント狙いの長期トレードに向いています。
値動きがおとなしいため、初心者にもオススメという意見もよく聞かれます。
南アフリカランドの今後の動向
南アフリカランドはこれまでのところ下落傾向にある通貨です。2015年から中国経済の先行きが不安視され、中国輸出に頼っていた南アフリカランドの評価も同様に下がってしまいました。
最近では新型コロナウイルスの感染が深刻になったことや米中関係の悪化、2020年3月に行われた国営電力会社エスコムによる計画停電などが積み重なり、南アフリカランドの慢性的な下落要因となっています。
ただし2021年現在、南アフリカランドはほとんどの相場でレンジとなっていて、相変わらず値動きが小さい通貨という評価を受けています。今後、資源価格が上昇することがあれば、それに合わせて為替が上向きになる可能性が高いので、南アフリカランドの取引を考えている場合は資源価格の推移に注目していきましょう。
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