チャートを見ていて「(米ドル/円)=100円」や「95円」などの区切りのいい数字の付近で為替がグイッと変動するパターンに気がついたことがあると思います。
このポイントは「ラウンドナンバー」といい、売買の狙い目でもあると同時に注意しなければならないタイミングです。
ラウンドナンバーとはなにか
世の中はラウンドナンバーで溢れている
「ラウンドナンバー」というのは「切りのいい数字」のことです。為替の世界では別名「キリ番」ともいいます。
新聞やニュースでは、「50年ぶりの快挙」とか「100万人達成」といった華々しい話題に混じって、為替の話題でも「90円突破」とか「3年ぶりの高値更新」など、切りのいい数字でニュースが紹介されているのをよく目にします。
切りがいい数字であればニュースが伝わりやすいという配慮からだと思いますが、象徴的な数字に注目が集まっていくのはある意味自然な姿です。
ラウンドナンバーが意識されやすい理由
人間の性質には、現在の数字に近く、なおかつきりのいい数字で行動しようとする傾向があります。たとえば水泳で900メートル泳いだ場合に、「せっかくだから、あと100メートル頑張って泳いで1,000メートルを達成しよう」という気持ちになることがありますが、この感覚は投資でも同じです。
(米ドル/円=99円)で含み益がある場合を考えてみましょう。そろそろ利益確定したいと思っている場合に、とくに深い理由がなくても、「切りのいい100円で決済しよう」と考えるのが自然な感覚だと思います。
このように、多くの参加者が100円(ラウンドナンバー)を意識することによって、その位置がサポートラインやレジスタンスラインになりやすくなるのです。
ラウンドナンバーを利用したシンプルなトレード方法
ラウンドナンバーを目標として、利食いや損切り(ストップロス注文)を入れることによって高い確率で利益を得ることができます。
ラウンドナンバー付近ではトレーダーたちの思惑が交差して価格がもみ合うことがありますが、最終的には買いか売りかのどちらかが優勢になって、節目価格を大きく抜けたり、逆に反発したりします。その流れに沿ってトレードすることは、初心者にとってもさほど難しいテクニックではないと思います。
ラウンドナンバーの裏に仕掛けられる「ストップ狩り」の罠
ところが、このような状況に紛れて危険な罠が仕掛けられている場合があるのです。その舞台裏を物語風に解説してみましょう。
登場人物の思惑はさまざま
現在、(米ドル/円=99円)で上昇している局面です。ショートポジションを持っているAさんは、含み損を抱えながら意味のある数字(米ドル/円=100円とする)の少し上にストップ注文を置いて耐えています。
新たにショートポジションを作ろうと思っているBさんは、ラウンドナンバー(100円)の少し下でエントリーしようとしています。ラウンドナンバーに到達したら売ろうという考えです。そのほか、ラウンドナンバーを超えてきたら順張りで買いたいというCさんがいます。
このように、いろんな立場の人が別々の思惑の元、ラウンドナンバーに注目しています。
プロ投資家が仕掛ける罠
トレーダーのさまざまな感情を利用して、機関投資家や業者がラウンドナンバーを狙って罠を仕掛けてきます。よくある値動きは次のようなものです。
為替はしばらく(99円)から(100円)の直下で何度か上げ渋る様子を見せます。機関投資家が大量の「買い」を仕掛けますが、売り手が(100円)を超えないように守っているのです。しばらくすると、一気に買われてラウンドナンバーを突破し、急上昇して(101円)が見えてきました。これが、機関投資家が仕掛けた「ストップ狩り」の罠です。
Bさんは(100円)手前で新規でエントリーしました。(100円)を超えたところでCさんも参加しました。一方でAさんはすでに(100円)を越えたところで損切りしています。
プロは一般投資家の損切りを掠める
ついに(101円)に達しますが、次の瞬間には機関投資家が一気に決済して為替は(99円)に反転してラウンドナンバーの下に逆戻りしました。Bさん、Cさんをはじめ、一般トレーダーがそろって損切りして討死するなか、機関投資家だけが利益を得る結果になりました。
ストップ狩りを逆手にとった手法
ラウンドナンバー付近で行われる理不尽なストップ狩りの裏をかいて稼ぐ方法を紹介します。ラウンドナンバースキャルピングといいます。
この手法は、ストップ狩りの値動きを利用して、有利な価格でエントリーし、ストップ狩りが終わったあとの値動きで速攻利食いしようという考え方に則ってします。
・ストップ狩りが行われる価格帯に指値注文を入れてエントリーする ・ストップ狩りがどこで止まるかわからないので分割でエントリーする ・ストップ狩りが終了すると急激に値が戻ってくるので、そこできっちり指値で利食いする
タイミングさえ合えば難しくはありません。ただし、実際にストップ狩りが進行しているかどうかの見極めについてはある程度の経験が必要だと思います。
したがって、初心者は相場の動きをしばらく観察しながら、少額で実験してみるといいでしょう。プロの裏をかくというのは気分のいいものです。
コメント