FXトレードをしていると、「約定ボタンを押したのに少しずれたレートで決済されてしまう」場合があります。この現象は「スリッページ」と呼ばれ、注文レートと実際に約定したレートの間に差が生じるために起こります。
デイトレードやスイングトレードといったトレード回数が少ない手法であればスリッページはあまり気にならないと思いますが、スキャルピングのようにトレード回数が非常に多くなる手法の場合は、スリッページの影響が損益に大きく関わってきます。
今回は初心者が知っておきたいスリッページの基礎と対策について詳しく紹介していきます。
スリッページが発生する仕組み
トレーダーが注文を発注すると、FX会社のシステムに到達してから実際の受注までの間にレートが変わってしまいます。(ドル/円=118.00円)のタイミングに買い注文を出したケースで、実際に約定するまでのわずかな時間の間に(ドル/円=118.50円)とか(=117.50円)など、レートが動いてしまうことがあるのです。
FX会社によってスリッページが異なることがある
最近はネット環境が格段に高速化しており、トレーダーが発注すると、多少のラグがあっても1秒程度で注文はFX会社のシステムに届きます。しかし、為替相場はコンマ何秒間で変動する世界です。もちろん全く変動せずに何秒間が過ぎることもあれば、1秒の間に大きく上下する場合もあり得ます。
FX会社によっても注文が届いてからのシステムの処理速度が異なります。トレード配信などの処理スピードが遅い会社ほど、スリッページが起こりやすいといえます。
スリッページは事実上FX会社のマージンである
スリッページは実質的にFX会社のマージンです(仕組みは後述します)。スリッページが発生すると、トレーダーはその分利幅が狭くなります。1回の利幅が狭い短期取引においては、スリッページは意外に見逃せない取引コストになる場合があります。
スリッページが発生しやすいタイミング
スリッページは以下の3つのタイミングやケースで発生しやすいといわれています。取引時に意識しておきましょう。
相場の急変時
相場が短期的に大きく動いたときはスリッページが発生しやすくなります。その理由は、値動きの急変にFX会社のシステムの処理がついていけないからです。
とくに重要度の高い経済指標や要人発言が発表されることによって注文が集中するようなケースでは、急激な値動きが発生することがあるので気をつけましょう。
流動性の少ない時間帯の取引
通貨を買う人と売る人が多い状態を「流動性が高い」といいます。流動性が高い時ほどスプレッドが安定するのに対して、流動性が低くなる(取引量が少なくなる)とスプレッドが広がる傾向にあります。
とくに週明けのオセアニア市場がオープンする時間帯は流動性が低いので注意してください。
カバー先金融機関が少ないFX会社との取引
FX会社が表示している為替通貨ペアのレートは、実際には世界の為替市場で実際に取引されているレートと全く同じではありません。そのからくりはFX業者とカバー先金融機関との関係にあります。
FX会社が提示する為替レートは、カバー先の各金融機関が為替市場で実際に取引しているレートに事務手数料をプラスして顧客に提供しています。この手数料が取扱い業者の実質的なマージンであり、収益になっているのです。
FX業者が提携するカバー先は1社だけではありません。ほとんどのFX業者が複数の金融機関と提携しています。
カバー先金融機関が3社あったとして、A社の提示レートが102.100円、B社が102.102円、C社が102.104円だったとすると、FX業者は自社にとって一番有利なレートを提示している金融機関を選ぶことができます。その分、顧客に有利なレートを提示できることになります。
スリッページを抑えて多くの利益を確保する方法
許容スリッページを設定する
各社のシステムの注文画面ではスリッページの値を調整することができます。たとえば、許容スリッページ値を2pipsに設定すると、上下2銭のスリッページまでは約定しますが、それ以上差が開いた時には約定しないという設定をすることが可能です。
FX初心者は「0~5pipsの間で、自分が許容できる範囲」を決めて設定するとよいでしょう。
指値注文と逆指値注文
指値注文を出しておけば、スリッページが発生してもトレーダーは損をすることがなく得をするだけです。指値注文は現在のレートよりもトレーダーにとって有利なレートで約定する注文だからです。
現在のレートが(ドル/円=102.000円)として、50銭下の101.500円で指値買い注文を出したとします。この場合に発生するスリッページは、トレーダーにとっては101.500円よりも安い(有利な)レートで約定することができます。
その反対に逆指値注文では許容スリッページを設定すべきです。逆指値注文ではスリッページの幅が広いほど、トレーダーにとってはコストが増えることになるからです。
なお、逆指値注文を損切り目的で使う場合は、決済が約定することを優先させるために許容スリッページを広めに設定しましょう。
カバー先が多くシステムが強固なFX会社を選ぶ
前述のようにカバー先の金融機関が多いFX会社ほどスリッページは起きにくい傾向があります。10~30社ほどカバー先があるFX会社であれば安心できるでしょう。
システムが強いFX会社であれば、注文が集中しても処理の遅延が少なくスリッページを抑えることができます。各社の公式サイトでシステムの内容をチェックしてみましょう。
また、すべてのFX会社が公表しているわけではありませんが、スリッページが起きにくいとして機能面をアピールしているFX会社もあります。スリッページの発生率を公表しているFX会社は、それだけ自社システムに自信があるということかもしれません。ちなみに約定率の高さとスリッページの起きにくさには直接の関係がないので、気をつけてください。
コメント