少ない金額で大きなお金を扱うという性質がある以上、FXにリスクはつきものです。知識不足による無理なトレードで借金地獄にハマる初心者は少なくありません。
むやみに恐れる必要はありませんが、リスクを回避する正しい方法を事前に知っておけば、安心してFX取引をすすめられるはずです。今回は借金地獄にハマる典型的なパターンとその回避方法を詳しく解説します。
追加証拠金(追証)が借金地獄の根源
FXではレバレッジをかけることで少額でも大きな取引をすることが可能です。そのために必要な最低保証金額が「証拠金」です。
証拠金は「取引金額のα%」など、FX会社によって異なる基準により決められています。取引の結果、証拠金がFX会社の基準を割り込むと、追加証拠金(追証)の通知がきます(マージンコールといいます)。追証を入れれば取引を続行できますが、入金せずに放置しておくとFX会社によって強制決済(ロスカット)されます。
決済が追いつかずに追証が求められるケース
通常であれば、トレーダーがどこかから借金までして追証することは考えられず、大きく損失を出したトレードでは、ロスカットされて終了というパターンが大半でしょう。FXで大きな借金が発生する大きな原因は、決済が追いつかずに追証が発生してしまうケースです。
週をまたいでポジションを保有していたケース
土日の間に経済状況が大きく変わり、週明けに予想と大きく異なる為替レートでスタートしてしまうケースがあります。このときレバレッジを大きくかけていると、月曜朝の開場と同時に追証を求められることがあり得ます。
急激な為替変動の発生
数年に一度の頻度で発生する相場の急変動時には、ロスカットが追いつかない場合があります。たとえば2019年年明けの(米ドル/円)フラッシュが有名です。このときは、年明け早々、米ドルが(109円⇒107円)と一気に下落しました。一瞬で数千万円プラスになったという武勇伝もあれば、追証が2,000万円発生したというウソのような話も聞かれました。
FX会社のシステムがダウンしてしまったケース
急激な為替変動があったときやシステムトラブルによって、FX会社のサーバーがダウンしてしまうことがあります。システムがダウンしている間に市場がさらに急変すると、復旧したときにロスカットがうまく働かずに追証を求められるケースが発生します。
システムダウンがあってもFX会社は補償してくれません。理論上、システムが復旧したあとにトレーダーに利益が出る場合もあるわけです。市場の急変を予想することはほぼ不可能に近いですが、システムの強靭なFX会社を選ぶなど、リスクを軽減する手立ても考えておいたほうがいいでしょう。
一発逆転狙いで追証が膨らむ最悪のパターン
決済が追いつかないケース以外で追証が大きくなるのは、結局のところ、個人の裁量によるところが大きいでしょう。
マージンコールに対して、そのまま何もしないで放置しているとロスカットが発動します。ロスカットされれば持っていた取引がすべて強制決済されます。口座残高も減りますが、追加証拠金を支払う必要がないので、それ以上借金が膨らむことはありません。
問題は、マージンコール時に追証を入れることによって取引を続行するケースです。「相場が回復するかもしれない」として、追証の入金後にさらに大きくレバレッジをかけるトレードを追加で行う人がいますが、このようにマイナスを一気に回復しようとする行為は非常に危険です。
おそらく、この時点では冷静さを失って収支計算もできない状態に陥っているのではないでしょうか。大半の場合はさらに追証が必要となり、借金が膨らむ地獄絵図が待っています。
ゼロカットシステムが利用できる場合
最も安全な借金対策の方法として、ゼロカットシステムを紹介します。
ゼロカットシステムとは、追証が必要なマイナスが出た場合、不足分をトレーダーの代わりにFX会社が支払ってくれるシステムのことです。最初からゼロカットシステムを導入しているFX会社を選んでおけば、追証による借金に怯える必要はなくなります。
ただし、国内のFX会社はゼロカットシステムを導入していないので海外のFX口座に限定されます。
大借金ができると一発で再起不能になる
「一度借金を抱えても、利益が出ればすぐに返済できるはず」。
そのように安易に考えてはいけません。都合よく事が運ばないのが相場の恐ろしいところなのです。話を単純にするために丁半博打を例にとって説明します。損失が100万円発生した場合に、一度で挽回しようとすれば元手は50万円必要です。1/2の確率で負ければ、次は150万円のマイナスを取り戻すために75万円の元手が必要になります。さらに連敗すると、次は225万円の損失を挽回するために112.5万円の元手で50%の勝率に賭けます。ここでさらに3連敗すれば、168.75万円の元手で次の勝負に賭けます。
つまり、100万円の借金を返すためには、3連敗まで容認するとして最大(168.75万円)の元手を準備しなければなりません。その一方で、このような一発逆転狙いではなく、コツコツと5万円、10万円ずつ返済していく方法もありますが、この場合は細かく勝ち続ける根気が続くかどうかが問われることになります。
このように、大きな借金を背負ったあとに再起を図ることは非常に難しく、ほとんどのケースでそのまま市場から撤退を余儀なくされ、借金だけが残る結果になります。
大きなマイナスを出してしまったら、そこでゲームオーバーになると心に誓いましょう。結局、借金をしないでFX取引をすすめるためには最初から無理のない範囲で取引をすることしかありません。
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