FXにおいてスプレッドは実質的な取引コストにあたる費用です。スプレッドはFX会社によって異なり、同じ業者であっても時間帯によって異なるという性質があります。FX取引で利益を最大化するためにはスプレッドについて正しく理解することが重要です。
今回は初心者がいまさら聞けないスプレッドの仕組みについてわかりやすく解説します。
スプレッドの仕組み
海外旅行で外貨両替する場面を考えてみよう
スプレッドの仕組みを理解するために、海外旅行に出かける場合に外貨両替を行う場面をイメージしてみましょう。両替所に表示されているレートを見ると、「円を米ドルに交換する場合」と、「米ドルを円に交換する場合」では、交換レートが微妙に違うことに気がつきませんでしたか?
たとえば円をドルに両替する場合は(1ドル=110円43銭)であるのに対して、逆に米ドルを円に交換する際は(1ドル=108円43銭)といった具合です。
かりに「円⇒ドル」と「ドル⇒円」の交換を同時に行ったとすると、「2円」がどこかに消え去ってしまうことになります。この差額こそ「スプレッド」と呼ばれるもので、外貨両替を行った金融機関の手数料収入に相当する経費です。
スプレッドは外貨両替とFXでも理屈は同じ
FXでは通貨ペアを売る際に適用される「Bid(売値)」と、通貨ペアを買う際に適用される「Ask(買値)」の差額がスプレッドとなります。
たとえば(ドル/円)の「Bid」が(103.753円)で、「Ask」が(103.755円)であれば、スプレッドは(0.002円=0.2銭)になります。
外貨取引とFXのスプレッドの違い
上記の例のように、外貨両替とFXのスプレッドの仕組みは同じですが、金額が違います。外貨両替では(2円)のスプレッドが発生するのに対して、FXではわずかに(0.2銭)です。
ちなみに、FXで(ドル/円)取引を行う場合に(2円)のスプレッドが発生するとすれば、為替相場で(2円)以上円安が進まなければ為替利益を得ることができません。これに対して(0.2銭)のスプレッドであれば、(0.2銭)円安になった時点でも利益が発生します。
1万ドルを両替する場合、外貨両替の手数料は2万円ですが、FXはわずか20円です。このように、スプレッドが狭いFXではわずかな為替相場の上下で利益を狙えるという特徴があるのです。
スプレッドは取引通貨やFX会社によって異なる
通貨ペアによってスプレッドには違いがあります。通貨の流通量などによって、調達コストに差が出てくるからです。また、FX会社によってもスプレッドの設定には違いがあります。(ちなみに以下は平均的なスプレッドになります。)
(米ドル/円)=0.2銭 (ユーロ/円)=0.4銭 (英ポンド/円)=0.8銭 (南アフリカランド/円)=0.9銭
スプレッドの単位
スプレッドの単位の基本は「pips」です。上記で引用した「銭」は、通貨ペアのうち一方が日本円のケース限定で使用される単位で、「pips」で表示することも可能です(1銭=1pips)。「pips」は日本円以外のすべての通貨ペアで用いられます。
スプレッドは変動する
スプレッドは常時変動している
為替相場の動きや各金融機関の相場見通しなどにより、同じ通貨ペアを取引している場合でもスプレッドは常時変動しています。本来であれば、顧客に提示するスプレッドもそれに伴って小刻みに変わるはずなのですが、取引しづらいとの配慮から、「原則固定」という方式を打ち出しているFX会社が主流です。
特殊な事情が生じた場合を除いて、原則としてそのFX会社が各通貨ペアに定めたスプレッドを固定して提供しているのです。
為替市場に事件が発生するとスプレッドが広がる
「原則固定」のサービスを提供しているFX会社でも、スプレッドを変更するケースがあります。それは為替市場で大きな事件が発生した場合です。
2020年春の「コロナショック」の際には外国為替市場が乱高下し、FX各社は固定の狭いスプレッドを維持することが困難になりました。その結果、ほとんどすべてのFX会社がスプレッドの原則固定を中止したのは記憶に新しいところです。
そのほか、アメリカの雇用統計など重要な経済指標において予測不能の発表があったときや、戦争や紛争が発生した時にもスプレッドは拡大する傾向があります。
取引が低調な時間はスプレッドが広がる
「原則固定」ではないFX会社の場合、スプレッドは取引量が少ない時間帯に拡大しやすくなります。たとえば日本時間の早朝(NY市場クローズ後)は市場参加者が少ないため、日中よりもスプレッドが開く傾向があります。
市場参加者が少なくなれば通貨の流通量も減って、インターバンク市場における「Bid」と「Ask」の差が拡大するのです。
スプレッドの変動以外にも注意しておきたいポイント
スプレッドが狭いほど為替差益を得やすくなります。もっとも、FXにおけるスプレッドはかなり狭く設定されています。したがって、スキャルピングやデイトレードなど頻繁にトレードを繰り返す手法であればスプレッドの違いに注目しておきたいところですが、スイングトレードや、もっと長期のトレード手法であれば、それほど気にすることはないともいえます。
約定率の高さもチェックしよう
スプレッドは狭いに越したことはありませんが、付け加えておくとすれば、スプレッドとともに「約定率」にも注意を払っておきたいということです。約定率とは、「自分が意図した通りのレートで売買が成立する確率」のことです。
「発注したレートと約定したレートが違う」「逆指値が滑って損失が膨らんだ」という経験をしたことのあるトレーダーも多いと思います。これを「スリッページ」といい、システム上のタイムラグの発生によって約定レートがズレてしまう現象をいいます。
ある程度のスリッページが生じるのは仕方がない部分もありますが、FX会社のサーバーやシステムの強弱によって大きく差が出るポイントでもあります。
いくらスプレッドが狭くても、自分が意図したレートで売買できなければ、せっかくの狭いスプレッドも「絵に描いたモチ」のようなものです。FX初心者は「スプレッドが狭い」「約定率が高い=システムが強い」という2点に注目して口座を選ぶようにしてください。
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