FX投資の話題になるとかならず議論に挙がるのが「損切り」の重要性です。FXに限らず投資の世界では、損切りできない人は最終的には生き残れないといわれています。それでも、できるだけ損切りを回避しようとして、最終的に大きなマイナスを喰らってしまう初心者が多いのも一方の事実です。
そこで今回は、逆説的に「絶対に損切りしない」トレード方法で勝つ方法について解説し、初心者の選ぶべきトレード方法についても検証したいと思います。
もしこんなトレーダーがいたらどう反論すればいいのか
「わたしは毎日10~20万円程度、月にして200万円以上はFXで利益を上げています。わたしは一切損切りしません。相場が短期的に下降に向かっていたとしても、いつかプラスに転じますから、その時点で決済すれば最終的にかならずプラスになります」。
こういう主張をするトレーダーに対してどのような反論ができるでしょうか。
損切りしないことによるリスク
その前に、一般的に損切りしないことによるマイナスリスクについて解説していきます。
証拠金が枯渇した瞬間にすべてを失う
損切りしないことによる最大のリスクは、ロスカット(強制的な決済)によって資金をすべて失ってしまうことです。為替の変動によって、口座資金が含み損に耐えて戻ってくることはたまにはあります。しかし、それは一か八かのギャンブルと同じことで、今回戻ってきたからといって、次も戻ってくるとは限りません。
ロスカットになれば終了ですから、それを回避するために値が戻るまで証拠金の追加を続けることができる金銭的体力がなければ、この方法は成立しません。
塩漬けになって機会損失を招く
損切りをしないことによる2つ目のリスクは、ポジションが塩漬けになって機会損失を招くことです。どれくらいのロットでエントリーしているかにもよりますが、含み損を抱えてポジションを保有している間は、他のポジションが持てなくなります。
つまり、ポジションを塩漬けにしている間は、もっと有力なチャンスがきてもエントリーできなくなるのです。もし適切に損切りしていれば、あらためて可能性のある相場に資金を投入することができたはずです。
マイナススワップポイントが貯まる
損切りしないことによる3つ目のリスクは、マイナススワップポイントがジワジワと溜まってくることです。このケースはマイナススワップが貯まる通貨ペアにポジションを持っている場合に限りますが、毎日少しずつマイナススワップポイントが加算されていくことによって「塵も積もれば山」で、塩漬け期間が長くなるほどにボディブローのように効いてきます。
「含み損+マイナススワップポイント」で口座資金を圧迫し、証拠金維持率が下がるスピードが加速していきます。
こうすれば損切りしなくても勝てるかもしれない
損切りしないことによるデメリットは上掲の通りですが、損切をしなくても、たとえば以下のような条件であれば、理論的には資産を増やすことは可能です。
レバレッジは可能な限り抑える
資金に余裕があれば、ある程度の含み損に耐えることができます。極端な話ですが、相場が半値以上に下落した場合でも、証拠金の積み増しが可能な資産の余裕があればロスカットを回避することができます。たとえばレバレッジを2倍以下に抑えて投資額を抑制すれば、証拠金の大きな積み増しは必要なくなるでしょう。
リーマンショック時に損切りせずにずっとポジションを持ち続け、5年後に含み損をプラスに転じて決済できたという人もいるそうです。決済しない限りスワップだけは利益になりますから、ロスカットを避けて粘り強く待ち続けることができれば、そのうちプラスにはなるのです。
勝ち逃げする
FXの話題になると時々目にするのが「勝ち逃げ」です。勝ち逃げのポイントは以下の2点です。
前もって取引の基準(利益確定、損失確定)を決めておく
基準に達したら利確(損切り)して、さっさと利益(損失)を確定する
つまりは自分で作ったルール通りに利確し損切りするというだけの話です。ルールを決めると同時に、以下のようなルール違反を絶対にしないことが重要です。
損切ラインに達したのにさらに粘る 利確ラインに達していないのに売却する
実際にトレードをしてみるとわかりますが、FXは想像以上にメンタルに左右されることが多いものです。「ルールを守らなかったけれど、結果的にプラスになったからOK」「あそこで決済しなければもっと利益が出たのに」といった発想の人がルールを守ることは難しいでしょう。
実際のトレードで相場の風向きの変化にたまたま乗って大きなプラスを出せるケースもあると思います。それは幸運以外の何物でもありません。そこでトレードの手を止めることができれば、勝ち逃げすることができます。これはFX以外の投資やギャンブルにも共通した真実です。
やはり損切りを適切に行う選択が正しい理由
FXでは損切りするのが正しいというのが結論です。資金的に余裕があれば、理論的には損切りしないまま塩漬けにして、結果的にプラスになって戻ってくることが証明できましたが、損切りしないことによるリスクやデメリットは他にもあるからです。
その最大の要因は塩漬けによる機会の損失です。
掛金に上限のない確率1/2の丁半博打を例にして説明しましょう。丁半博打ではいくら連敗しても、次回の勝負で負け金の合計額の2倍の賭金で勝てば、それまでのマイナスをすべて回復し、掛金が2倍になって戻ってきます。この「倍々ゲーム」はある意味必勝法ですが、逆にいうと、これほどのリスク(掛金の準備)を負ったにもかかわらず、収益は資金の2倍になるに過ぎません。
そうであれば、もっと効率のいいギャンブルやリスクの低い確実な投資先があるはずです。これが機会損失の考え方の根本になります。最初に例にあげたFXで月200万円稼いでいるトレーダーについて、投資資金がいくらぐらいなのか想像してみてください。おそらく数千万円単位以上、あるいは数億円単位になるのではないでしょうか。
このような極端なケースを一般のトレーダーが参考にすべきではないと思います。また、かりに現金資産が数千万円~数億円あるとするなら、FXをやるのではなくレバレッジをかけて不動産投資をしたほうが資産運用として低リスクで有利だと思います。
投資というのは効率性が重要なのです。
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