FXには必勝法はありません。しかし、スワップポイントの差を利用した「さや取り」というトレード手法は、巷で必勝法だといわれているそうです。
今回は、「FXの必勝法」という紹介もされている「両建て(サヤ取り)」手法について、その真偽を確認していきたいと思います。
スワップポイントを利用したテクニック
マイナー通貨のスワップポイント
スワップポイントとは、通貨間の金利差によって得られるもので、金利の安い通貨を金利の高い通貨に交換すると、金利差が利益になります。
たとえば、トルコリラや南アフリカランドなどは金利の大きな通貨で知られていますが、超低金利の日本円との交換によりスワップポイントが付与されます。
スワップ両建てによる「さや取り」とは
通常の取引では、ある通貨ペアのポジションを持つ場合は「買い」と「売り」のどちらか一方を選択しますが、「両建て」というのは、同じ通貨ペアで「買い」「売り」両方のポジションを持つことをいいます。必勝法といわれているのは、この両建てのトレード方法のことです。
「さや取り」の具体的な方法
FX会社によって異なるスワップポイント
スワップポイントはFX会社ごとに異なる金額が設定されています。FX会社の「買いスワップ」と、「売りスワップ」の差額を狙って「さや」を取るというのがこのトレード方法の趣旨です。
早速、具体的な例で説明します(ZARは南アフリカランド、JPYは日本円)。
・甲社の(ZAR/JPY)の買いスワップ⇒10万通貨単位で(+130円) ・乙社の(ZAR/JPY)の売りスワップ⇒10万通貨単位で(-70円) ・差し引き損益⇒80円(130-70円)
甲社で「買い」ポジションを10万通貨保持し、乙社で「売り」ポジションを同額の10万通貨保有することにより、1日あたり80円の利益が発生することになります。それぞれ100日保有し続けると、8,000円の収益を得ることができます。
両建てトレードの利点
このトレードの利点は為替レートとは関係なく利益を得られる点です。
「両建て」であることにより、理論上、為替レートがどちらに変動しても損失は発生しないので、スワップの差額だけ利益を得ることができるのです。FXの必勝法と呼ばれる所以はここにあります。
「両建て(さや取り)」にもあるリスクとは
一見必勝法と思える「両建て(さや取り)」ですが、 もちろんこの方法にも落とし穴が存在しています。
証拠金と資金の管理について
ひとつ目の問題は「証拠金」や資金の管理です。
「両建て(さや取り)」では買いポジションと売りポジション両方を持つため、エントリーするための資金が通常のトレードの2倍必要になります。
実際のトレードでは、両建てにより、必ずどちらかの口座では利益が出て、どちらかの口座は同額の損失が発生します。「イッテコイ」で為替の収支はゼロですが、相場が大きく動いた場合には、マイナスが出た側の口座は証拠金維持率が低下し、ロスカットが発生する危険があります。
したがって、ロスカットが大きくなって「追証」を発生させないように、事前に大きめの証拠金を設置しなければなりません。
収益率がきわめて低い
「両建て(さや取り)」のデメリットは収益率が低いことです。投資金額が少ないと当然ながらリターンも少なくなり、利益がお小遣い程度にもならない可能性があります。上記の例題では、合計20万通貨投資して、利益は1日80円にしかなりません。
両建てを行う際は、投資資金もスプレッドの負担も通常のトレードの2倍かかります。上手くいけば、年利で5%ぐらいは出るかもしれませんが、投資できる資金が少ないトレーダーにとってはあまり魅力的に感じないでしょう。
スワップポイントの変動
両建て(さや取り)手法の一番の問題は、設定されているスワップポイントそのものが変動する可能性があることです。現在、各FX会社が設定しているスワップの金額は、未来永劫保証されたものではなく、予告なく変更されることがあります。スワップポイントは度々変わるので、その度に資金移動を行わなければなりません。
必勝法かもしれないが魅力が少ない
結果的に「両建て(さや取り)」はかなり必勝法に近づいている手法といえるでしょう。しかし、投資効率が悪いことや、長期間資金が凍結されてしまうことを考えた場合、必ずしもリスクに見合ったリターンが得られるとはいえないと思います。
そもそも、FXのダイナミズムとは異種の取引手法であり、堅実さを重視するのであればもっと確実な方法があるはずですから、初心者トレーダーがあえてこの手法にトライする必要はないと考えます。
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