オーストラリアは鉄鉱石や石炭など豊富な資源を持ち、全輸出の50%以上を鉱物資源が占めることから、オーストラリアドル(以下、豪ドル)は資源国通貨の側面を持っています。
オーストラリアは中国を最大の貿易相手としており、輸出全体の30%以上が中国向けです。そのため、豪ドルは中国の政治経済の影響を受けやすいという特徴があります。また、かつて豪ドルは高金利通貨として知られていましたが、昨今は状況が変化してきているようです。
今回はオーストラリアの通貨「豪ドル」について解説していきます。
豪ドルの特徴
資源国通貨としての豪ドル
オーストラリアは鉄鉱石や天然資源が豊富であることから、豪ドルは資源国通貨として資源価格の影響も受けやすい通貨です。資源国通貨は、資源の需要によって為替が動く仕組みがあることを知っておきましょう。
豪ドルを取引すべき時間帯
世界の為替市場は、ニュージーランドのウェリントンから開始します。その後はシドニー、東京と順に市場がオープンして、欧州、ロンドン、ニューヨークを経て一日の取引がクローズします。
シドニー市場は日本時間の6時にオープンします。為替の動きが活発になるのは、おもに午前中です。週末に大きなニュースがあった後の月曜日の早朝は価格が乱高下する可能性があるので注意が必要です。
そのほか、オーストラリアや中国の経済指標が発表される日本時間の午前中は、豪ドルが動きやすい傾向があります。
豪ドルの変動要因
米ドルと同様に、豪ドルも経済指標や要人発言が為替の変動要因になります。そのほかにも注目しておきたい変動要因を紹介します。
豪ドルの金利の変動
かつて豪ドルは高金利通貨とされ、2008年には一時(7.25%)まで金利が引き上げられましたが、2021年時点では(0.1%)まで政策金利が下がっています。金利安とはいえ、オーストラリアは経済的・政治的に不安要素が少なく天然資源を中心にした輸出も活発なので、依然として人気の高い通貨といえます。
資源価格の影響
オーストラリアは石炭や鉄鉱石のほか、アルミニウム、石油、レアアースなどの資源輸出大国です。資源価格の影響を色濃く受けるという特徴は、同じく資源通貨の一面を見せるカナダドルとよく似ています。豪ドルを取引する際には、鉄鉱石をはじめ主要輸出品の資源価格に注目しましょう。
リスク「オン」「オフ」に投資家が反応する
豪ドルは市場のリスクオン、リスクオフの影響を受けやすい傾向があります。リスクオンとは、投資家たちが「イケイケドンドン状態」で投資を行っている状況で、リスクオフはその反対に、投資家たちが財布の紐を締めている状態をいいます。
豪ドルは、リスクオンでは上昇し、リスクオフでは下落しやすい通貨とされています。
中国リスク
昨今は最大の貿易相手国である中華人民共和国との関係悪化がすすんでいます。資源価格の高騰とともに、中国の政治経済の影響には目を離せません。
豪ドルの代表的な通貨ペア
豪ドルの代表的な2つの通貨ペアについて、その特徴を解説しましょう。
豪ドル/円
2000年以降、オーストラリア景気は回復軌道に乗り、豪ドル円相場は2007年には100円を超えたこともあります。この間、豪州の政策金利が(7.25%)にまで引き上げられたことなどを受けて、低金利の円を売って高金利の豪ドル買うという「円キャリートレード」が活発化しました。
現在は政策金利の抑制がすすみ、金利差を狙ったトレードは見られなくなりましたが、円との通貨ペアでは比較的大きなレンジが発生する傾向があることから人気があります。
米ドル/豪ドル
かつては金利を狙った投機的な取引が多かった豪ドルですが、現在は米ドルとの比較においても豪ドルは一貫して利下げを強めています。近い将来においても金利差が拡大する要因も今のところは見当たりません。
豪ドルはアメリカの経済ニュースに対する感応度も大きいといわれているので、アメリカ発の大きなニュースには要注意です。リーマンショックの際には、オーストラリアは経済的にほとんど影響を受けていなかったにもかかわらず、豪ドルは米ドル以上に値を落としました。
豪ドルの今後の動向
オーストラリア準備銀行は金融緩和姿勢を徹底して維持しています。今のところ大きな方針転換の兆候は見られません。世界的な資源高が続けば、これを追い風に一段と豪ドル高が進行すると予想されています。
注目しておきたいのは中国の動向です。オーストラリアと中国との関係悪化がさらに続くようであれば、為替への予想外の影響が現実化する懸念は捨てきれません。
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