トルコはアジアとヨーロッパをつなぐ交通の要衝の地であり、古くから貿易で栄えてきました。
経済成長も著しいトルコですが、その反面、この国が抱える固有のリスクについても注目する必要があります。中東からの難民問題は深刻な問題です。IS(イスラム国)の活動やアフガニスタン情勢によるテロのリスクも高く、治安の悪化が海外からの積極的なトルコ進出を阻む要因となっています。
また、長期独裁のエルドアン大統領による経済、外交方針が為替に大きな影響を与えます。
トルコリラの特徴
圧倒的な高金利通貨「トルコリラ」
トルコリラは日本のFXトレーダーの間で非常に人気が高い新興国通貨のひとつです。その魅力は何といっても政策金利の高さです。
世界的な利下げムードが強い中で、トルコは継続的に高金利政策を採用しています。2021年8月時点で(19%)と、ピークよりは低くなったものの他国との比較では圧倒的な高金利を誇り、多くの投資家がスワップポイント獲得狙いで運用しています。
少額からトレードできる
(トルコリラ/円)は2021年8月現在、(13円台)近辺で推移しています。一方、米ドル円やユーロ円は100円以上のレートですから、トルコリラを取引するための資金は10%程度で済みます。
(1,000通貨)での取引であれば、ドルでは(4,000~5,000円)程度の証拠金が必要ですが、トルコリラなら(500~600円)程度でOKです。
グローバルな資金の流れが為替にビビッドに影響する
トルコは慢性的な経常赤字国であり、国内の資金需要を満たすために外国からの資金に依存しています。そのため、先進国の金融政策の変化などグローバルな資金の流れのほか、トルコの対中、対米政策が相場変動に大きく影響を与えます。
世界情勢の悪化による輸出の落ち込みや原油高はトルコ経済の成長を妨げる要素となり、トルコ国内からの資本流出の傾向が強くなります。
流動性が低いマイナー通貨
トルコリラの特徴のひとつに、主要通貨である米ドルやユーロなどと比べて流動性が低いという点があります。インターバンク市場での流動性が低いため、価格の暴落や値幅の拡大が発生した際には、とくに日中の取引で価格の提示が一時的にできない事態に陥る可能性があるので注意が必要です。
「窓開け(ギャップオープン)」に注意
週末に市場が閉まり、月曜の朝に相場がオープンするときに発生する為替のギャップを「窓」「窓開け」といいます。
「窓」による為替ギャップはどの市場や通貨ペアにも共通することですが、窓が開いた瞬間(市場がオープンした時)にはすでに価格が急落した状態なので投資家は対応できません。トルコリラの問題は、他の通貨ペアに比べても窓開けの幅が大きい傾向があることです。証拠金を相当程度積んでいる場合でも、強制ロスカットを免れることのできないリスクが高いといえます。トルコリラの短期売買についてはとくに、週末にポジションを持ち越さないことを心がけた方がよさそうです。
トルコリラ大暴落の歴史
アメリカの制裁関税
2018年8月に米国がトルコに対して制裁関税を課したことを発端とした「トルコショック」によってトルコリラは大暴落しました。この年、トルコリラは年初から(40%)以上、1日にして最大(23%)もの下落を記録し、(トルコリラ/円)は当時の史上最安値である(15円台)を記録しました。破綻した日本のトレーダーも多く出ました。
2021年にふたたび大暴落
トルコリラは、2021年3月にふたたび大暴落しました。エルドアン大統領は、政策金利を(19%)に引き上げたことに対する不満から、トルコ中銀総裁の解任を発表し、これを受けてトルコリラが暴落したのです。
今後も予断を許さない
トルコリラは2000年から20年間で(1/20)の価値に下落しました。それらの大暴落の決定的な原因は、トルコが慢性的な経常赤字国であり、世界情勢の影響を受けやすいということです。慢性的に国外に資金が流出している状態、つまりトルコリラが常に売りにさらされているという現状があることから、今後も為替の変動性の強い状態は変わらないと考えていいでしょう。
トルコリラの今後の動向
トルコリラは2021年8月の大暴落にもかかわらず、日本の投資家の間でも引き続き人気があります。しかし、トルコ政府の経済政策の動きや慢性的なインフレ、アフガニスタンやイラクなど中東の状況変化により、今後ますます為替の流動性は予断を許さない状態にあると考えられます。
このように考えると、トルコリラが長期の資産形成に適した投資対象かといえば、大いに疑問があるところです。高金利や為替の振れ幅の大きさから魅力とリスクが同居する通貨ですが、とくに初心者が手を出すことは危険な通貨だといえそうです。
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