韓国ウォンはFXトレードではマイナー通貨です。取り扱っているFX会社も少ないので、あまり魅力的な通貨ではないかもしれません。
韓国の代表的な企業であるサムスン電子やLG電子は世界のITの先端を走っていますが、その業績が為替にほとんど反映されないという特殊な事情もあります。
日本のトレーダーにとっては、情報も集めやすく政策金利も上昇傾向にありますから、もっと注目されてもいい通貨だと思うのですが、世界経済の影響をモロに受ける脆弱性から、ウォンは投資家から敬遠される傾向があります。
ワロス曲線とはなにか
「ワロス曲線」はネットスラング
「ワロス曲線」とは、ウォンの対ドルなどの為替の動きが「w」の文字を描くように極端に上下することから生まれたネットスラングです。為替の動きが、あたかもネット上で「笑」を意味する「www」が並んで見えることから、このような名称で呼ばれるようになりました。
「ワロス曲線」が、韓国政府が通貨防衛のために為替介入をおこなっている証拠であることは公然の秘密です。
ワロス曲線が注目されるようになったきっかけ
「ワロス曲線」が一般にも注目されるようになったのは、2008年のリーマンショックの際に、韓国当局が通貨防衛を行ったときのチャート形だといわれています。
以後、このようなワロス曲線が出るたびに「韓銀(韓国銀行)砲 炸裂」などとネット上で揶揄されています。
ワロス曲線が笑われる理由
なぜワロス曲線が笑われるのかといえば、その介入があまりにも露骨でわかりやすいからです。一定の為替になると必ず大量の買いが入って、それ以上上昇しないことが誰の目にも明らかなのです。
ワロス曲線を把握することができれば誰でも簡単に儲けられそうですが、ある瞬間からワロス曲線とは別の現象が生まれるため、為替予測は難しいといわれています。
韓銀の予算が決まっている?
大量の資金投入による通貨防衛によってワロス曲線が描かれたあと、その壁を突破されたあとには介入がなくなり、しばらく放置されるという不思議な現象が見られます。
これはあくまでも推測ですが、その日あるいはその時間に投入できる韓銀の資金の総量があらかじめ決まっているからだと考えられます。韓銀が予算を使い果たしたあとは、防御ラインを突破されても放置するしかないわけです。
このような稚拙な為替投入を評して、ワロス曲線はその名のとおり笑いの対象となっています。
為替が高くなっても安くなっても具合が悪い特殊な事情
輸出依存度の高い韓国経済
なぜ、このような通貨介入がされるのかについては韓国経済の特殊事情があります。
韓国経済は国内市場が小さく、輸出入依存度が非常に高いことで知られています。韓国のGDPのうち輸出依存度は(60%以上)を占めています。アメリカはGDPの(20%弱)、日本の場合は(30%弱)ですから、輸出依存度の高さは突出しています。ちなみにドイツの輸出依存度はGDPの(70%)を占めますが、ユーロという強い通貨の裏付けがあるので、韓国とは事情が異なります。
ウォン高でもウォン安でも困る理由
韓国の主要産業である自動車やIT部門のビジネスモデルは、付加価値の高い基礎材を外国(主に日本)から輸入し、国内で組み立てて完成させるのが基本です。ほかにもいくつか要因はありますが、ウォンが安いと基礎材の価格が高くなり、ウォンが高いと輸出に不利になり、いずれも具合が悪いことになります。
日本の製造業の場合、基礎材(たとえば石油や鉄鉱石)を輸入して、付加価値の高い基礎材を製造する技術がありますが、韓国の場合は、自国で付加価値の高い基礎材を製造することができずに輸入に頼っているため、為替の影響をより大きく受けるわけです。
ウォンが脆弱な理由
半導体メモリーや液晶などで世界を席巻している韓国ですが、貿易においては自国通貨で決済することができず、すべてドルで決済をおこなっています。
1997年のアジア通貨基金の際にはウォンは暴落し、1MFから金融支援を受ける事態となりました。また2008年のリーマンショックでもウォンの急落があり、このときはアメリカからの融資を受けて窮地を脱しています。韓国は主要産業の多くを国際需要に頼っていることから、国際金融市場の環境悪化がおこれば、たちまち通貨不安に陥ってしまうのです。
圧倒的に取引量が少ない
2020年に発表された国際決済銀行(BIS)のデータによると、世界のすべての通貨取引量に占めるウォンの割合は(2%未満)に過ぎません。ちなみに、おもな通貨の取引量は以下の通りです。
アメリカドル⇒(88%) ユーロ⇒(33%) 日本円⇒(16%) イギリスポンド⇒(13%) オーストラリアドル⇒(8%)
※通貨取引は2つの通貨によるため、全通貨の取引割合を合計すると200%になります。
離脱率の高い海外資本を抱える
1997年の通貨危機以降、韓国は外国資本を呼び込むために資本取引規制を撤廃しました。これによって海外からの資本流入が一気に加速しましたが、投資先は長期貸付や国債ではなく、多くは株式投資や短期の銀行貸付など「逃げ足が速い」投資先への流入がほとんどを占めています。
このような資本はグローバル金融の状況に機敏に反応しやすく、国際金融が不安な状態になれば真っ先に流出し、ウォンは一気に急落します。その対抗策として韓国政府と韓国銀行は為替介入して、急速な相場の変動を防ごうとしているわけです。
韓国ウォンをトレードするなら
ウォンを扱うFX会社は、猫道場が知る限り日本国内には3社しかありません。
FX会社 | スプレッド |
SBIネオモバ FX | 5.9銭 |
IG証券 | 200銭 |
SBI FXトレード | 330銭 |
スプレッドは圧倒的にほかの会社よりも狭いので、韓国ウォンをトレードするなら「SBIネオモバ FX」がおススメです。
韓国は中国経済への依存度が高く、コロナの影響や対日関係の悪化という悪材料もあるので、中期的にはリスクの大きい通貨だと考えたほうがいいでしょう。ウォンを主戦場として戦っているトレーダーはほとんど知りませんが、もしワロス曲線を把握することができれば、成功の可能性があるのかもしれません。ただし、人気のない通貨ということが、それを証明しているようにも思います。
もし興味があるのであれば、実際にトレードする前に研究対象としてウォッチしてみてもいいかもしれません。
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