FXでは90%の人が損をするといわれています。
ほんの一握りの人だけが高額の儲けを出すことができ、圧倒的多数のトレーダーが損をする世界というのが一般常識としても広がっているのですが、それは本当でしょうか。
今回は「FXで90%の人が負けている」説の本当の意味について解説していきます。
FXはゼロサムゲームである
FX市場を単純化してみると
AさんとBさんが5万円ずつ出してFX取引を開始すると、10万円規模の市場ができます。
FXは市場のお金を奪い合う「ゼロサムゲーム」です。Aさんが1万円得をすると、Bは1万円損をすることになります。
AさんとBさん二人の損益合計はゼロですが、取引には手数料がかかります。したがって、その手数料分だけAさんの利益が減り、Bさんは損が増えます。たくさん得をした人には20%の税金がかかってしまうため、Aさんの利益はさらに減ります。
このように、FXでは利益は小さく、損は大きく、その結果誰も得をしないという考え方があります。
ゼロサムゲームが言及していない重要なポイント
たしかに上掲のサンプルはFXの仕組みの一部分を表していますが、言及していない重要なポイントがあります。それは、市場参加者はAさんとBさんだけではないということです。
実際の市場では、つねに参加者の入れ替わりがあり、市場の規模は参加者・退場者の入れ替わりによって、その規模が変動します。したがって、Aさんの勝ちは直接Bさんの収益に反映されるとは限らず、AさんもBさんも勝ち、ほかの誰かが損益を出していることも考えられます。変動し続ける参加者全体の出資金のなかでゼロサムが発生しているということになるわけです。
「FXで90%の人が負けている」説は本当か
少し古い資料ですが、金融先物取引業協会がおこなった2018年の「外国為替証拠金取引の取引顧客における金融リテラシーに関する実態調査」を紹介しましょう。
金融先物取引業協会の調査対象
大前提として、この実態調査は本当の意味での実態を反映した統計ではないことに注意が必要です。調査は現在進行形でFXの取引をしているトレーダーが対象であり、FXをやめている人は除外されているからです。
したがって、実態調査では「市場参加者の60%が収支ゼロもしくはプラスだった」というデータも掲載されていましたが、かなり割り引いて検証する必要があるでしょう。
「FXで90%の人が負けている」説はやはり正しいようだ
別のデータも参照してみましょう。
金融先物取引業協会は4半期ごとの契約口座数と実際に取引をしている口座数の推移を公表しています。これによると、口座数には4半期ごとに増減がありますが、実際に取引をしている口座数の割合は10%強で大きな変化がありません。
儲かっているなら取引はやめないはずですから、「儲かっているのは全体の10%」という仮説は実態に近いと考えていいのではないでしょうか。
勝ち組10%の本当の意味
金融先物取引業協会調査には、5年以上FX取引を継続しているトレーダーが40%以上存在するというデータも掲載されています。おそらく、このなかに10%の勝ち組が入っているはずです。つまり、継続的にトレードしている市場参加者の25%(10÷40)は勝ち組である可能性があるということです。「勝率10%」との印象面での違いは格段に大きいものがあります。
難関国家試験を例にして考えてみましょう。
合格確率10%の難関試験にチャレンジするとします。ライバルはどんな人たちでしょうか。おそらく50%は「思い出受験組」であり、ライバルとなるのは残りの50%程度ではないでしょうか。そうなると実質的な合格率は20%にアップします。これなら随分、印象が違ってきます。
勝ち負けを分けるポイント
90%の負け組はどんな人たちか
それでは、どんな人が「負け組」に入るのでしょうか。それは、おもに相場に慣れていないビギナーや、不勉強なトレーダーです。かれらの負け分はスキルをもつトレーダーや機関投資家の利益として吸い取られ、1年以内に市場から撤退する運命にあります。
儲かるトレーダーは特別な人たちか
FXで勝っているのはプロトレーダーやヘッジファンドなどの特殊な投資家に限りません。サラリーマンや主婦トレーダーの勝ち組も多く活躍しています。かれらの負け組との決定的な差は、とにかくリスクに敏感だということです。
勝ち組トレーダーは、取引量、損切や利確のタイミングについて明確な基準をもってトレードをしています。そしてなによりも、リスクの低いタイミングでのエントリーが一番重要だと考えています。
5年間市場で頑張ればかならず結果が出る
これからFX市場に参入する初心者は、カモにされないようにFXの勉強をし、奪われる側から奪う側に立場を入れ替わらなければいけません。スキルアップの努力をしなければ必然的に90%組に入り、1年以内に市場から退場してしまうでしょう。
目の前のトレードの進行が気になるのは当然ですが、重要なのは目先の勝ち負けではなく、長く戦うための資金管理です。
初心者にとっての具体的な目標として、5年間市場で生き残ることが10%の勝ち組に入るための前提であり、そのことをデータが示してくれています。
コメント