適切な運用をしていれば破滅的な損害を受けることの少ないFXですが、戦い方を間違えると大きな損失が発生するリスクがあります。とくに歴史的な事件の際には、過去にも多くの悲劇的な事例が発生しています。
今回はリーマンショックで資産のほとんどを失ったFX投資家の例から、初心者が他山の石として学ぶことができるケースについて学習していきましょう。
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リーマンショックで大損害を被ったFXトレーダー
レバレッジを大きくした途端に大暴落
今回紹介するFXトレーダーをAさんとします。AさんはFXを始めてから3年が経ち、これまで勝ちと負けを繰り返していましたが、大きく負けることもなく、損益はトントンといった状況でした。
ちょうどトレードにも慣れてきたところで、自分の力を過信しはじめていたAさんは、取引するレバレッジを大きくしていった矢先でした。
損失確定を認めることができない
2008年9月15日にリーマン・ブラザーズ証券が破綻しました。その後、わずか3か月で(ドル/円)は17円もの大暴落を記録しました。
リーマン破綻直前に買いポジションを持っていたAさんは、損切りすれば大きな損失が確定してしまうという事実を認めることができず、「このまま下がり続けることはあり得ない。いずれ戻るはずだ」と根拠のない願望によって損切りしないままポジションをもち続けました。それどころか、「こんなにドルを安く買えるのだから」と逆に欲が出て、大暴落相場のさ中でどんどんナンピン買いをすすめていったのです。
ナンピン買いによって完全に泥沼にハマる
ナンピン買いは「安値で買うことによって、前の買値と合算して平均すれば購入コストが下がるため、元の買値に戻れば儲かる」という考え方がその背景にあります。
Aさんは負けを認めるどころか、ドル値の大暴落は逆に絶好のチャンスであると自分にいい聞かせていたのです。
しかし「元の買値に戻れば」というのは意味のない願望にすぎません。たしかに、為替は上下を繰り返しながらも、いつかは戻るはずです。しかし、その「いつか」が問題です。1週間後かも知れないし、何年もかかるかもしれません。リーマンショックの場合は後者でした。
「ドルが戻るまでには、それほど時間がかからないだろう」というAさんの希望的観測が損失をさらに大きくし、最終的に後戻りできないほどの状況に陥っていきました。
損失は回復できないレベルに膨らむ
ナンピンを繰り返してポジションが膨れ上がりましたが、ドル値は一向に戻りません。Aさんは神頼みをしながら下落がストップするのを待ちましたが、当然のように上がるはずもなく、含み損が抱えきれないレベルにまで膨らんだところで、強制ロスカットの寸前で自ら損切りする結果となりました。
この結果、Aさんはたった1回のトレードで1千万円近い損失を確定させてしまいました。
大きすぎる損失を目前にするとほとんどのトレーダーは損切りできない
初心者が大損するケースはひとつだけ
多くのFX初心者が大損を経験してしまう理由は「損切りできない」ことに尽きます。「ほかにも理由があるはずだ」と思われるかもしれませんが、理由は本当にこれだけだとしかいいようがありません。大損した後であれば誰もが気づくのですが、大損したトレーダーにとっては「後の祭り」です。
なぜトレーダーが損切りできずに大損してしまうのかといえば、それは人間の潜在意識はもともと損切りできない構造になっているからです。これをプロスペクト理論といいます。
損失があまりに大きすぎると損切りできなくなる
Aさんが買いポジションを持った途端に相場が暴落し、含み損はどんどん大きくなっていきました。そこで損失を確定していれば、傷口は浅くて済んだのですが、損失のあまりの大きさにAさんは思考停止に陥ってしまいました。そして、根拠なく「50%の確率で損しない」に賭けることになったのです。
さらに、ナンピンをおこなうことによってドル値が戻るという確信を根拠なく高め、損失を確定させるタイミングをどんどん後ろにずらしていきました。
ナンピンが成功することもあるからタチが悪い
為替はさまざまな要因が組み合わさってレートが決まります。
場合によってはその通貨固有の原因ではなく、市場にリスクオフ感が漂って下げていることもあります。あるいは大きな事件が発生した際には、その国の経済自体に直ちに影響が出るわけではないにもかかわらず、市場参加者の印象だけで大きく下げるということも考えられます。このような場合は、市場の行き過ぎはやがて修正されていきます。
多くの場合、ナンピン買いは失敗に終わることが多いのですが、このようなケースではまれに成功するケースもあり得ます。
ナンピンは危険な手法だということを学んだと思う
ナンピン買いをすれば買い付けコストが下がるように思います。しかし冷静になって考えてみれば、それは最初に買っている分のコストが下がるだけのことで、後から買ったものは買った途端から取得コストは上がります。要するにナンピンとは単に賭け金を増やしているだけの話なのです。この理屈が理解できれば、ナンピンをすることのリスクの大きさを実感できるのではないでしょうか。
リーマンショックのような事態が起これば、あきらめるしか方法はありません。最善の選択は、損害を最小限に食い止めることです。Aさんも(ドル/円)が17円も暴落する前の時点で、悔しいとは思いますがナンピンなどせずに損切りするべきでした。しかし、資金をすべて失ったあとで納得したところで、もう遅いのです。
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