FXトレーダーにとって、実質的な取引コストであるスプレッドは口座選びの際の重要な要素です。
スプレッドはFX会社ごとに微妙な差があり、トレーダーが口座開設する際の決め手にもなるポイントです。また、FX初心者が「どのようにスプレッドが決まるのか」を知ることはFXの仕組みの基礎を理解するうえでも重要なテーマになります。
スプレッドはFX会社によって違いがありますが、通貨ペアによっても違いがあります。その理由については、よくわかっていない初心者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、通貨ごとにスプレッドが違う理由を解説し、初心者が取り組むべきトレードの方向性についてもアドバイスします。
スプレッドが発生する仕組み
スプレッドとはなにか
スプレッドは、FX会社が提示する「売りレートと買いレートの差額」です。一般的に買いレート(ASK)の方が売りレート(BID)よりも高く、新規注文が約定した瞬間にスプレッド分の差額がトレーダーの負担になります。
FX会社によるカバー取引
トレーダーから注文を受けると、FX会社は提携している銀行(カバー先)に顧客の注文と同量の注文をおこないます。これを「カバー取引」といいます。
顧客がポジションを注文します。為替レートが円高に動いてロスカットになれば、ロスカットによる損失分がFX会社の利益になり、円安に動いて利益を確定させた場合は、FX会社が顧客にその利益を支払います。
この場合に、多くの顧客が利益を上げてしまうと、FX会社は大きな損失を被る可能性があります。その損失を未然に防ぐために、FX会社はカバー先に顧客がした注文と同じ注文をすることによって損失を防いでいるのです。
FX会社はあらかじめ変動リスクを上乗せして提示している
正確にいうと、顧客からの発注とカバー取引の間にはわずかなタイムラグがあるため、2つの取引のレートは完全には一致しません。
この対策として、FX会社は「変動リスク」を上乗せして顧客にレートを提示しています。変動リスクをわずかに上乗せすることによって、顧客からの受注からカバー取引の執行までの為替の変動リスクを「飲み込む」という建前なのですが、実際にはこれがFX会社のマージンになるわけです。
通貨ペアによってスプレッドは全然違う
(ドル/円)のように(0.2銭)程度のスプレッドであれば、ほとんど気にならないかもしれませんが、通貨ペアによってはスプレッドが(300銭)以上になるケースもあります。このようなスプレッドの大きい通貨ペアを何度も取引していると、スプレッドが積み重なって無視できない金額になるため、注意が必要です。
スプレッドは通貨の流通量によって異なる
インターバンク市場の金融機関が通貨ペアの売買の数量に応じてスプレッドを決めます。
取引量が多い通貨ペアは売買するトレーダーが多いため、スプレッドは小さくなります。金融機関は顧客を多く集めるために、取引量の大きい通貨ペアに有利なスプレッドを設定していますが、その一方で、取引量が少ない通貨ペアにはスプレッドを広く設定しています。
スプレッドが狭い安定性が高い通貨
(ドル/円)のように需要が高く日常的にインターバンク市場で取引されている通貨ペアは、レートの変動が安定しています。インターバンクはより多くの投資家を集めるため、また突然値段が飛んでしまうようなリスクも低いため、スプレッドは圧倒的に狭く設定されています。ユーロ、英ポンド、豪ドルなどのクロス円通貨ペアも安定性が高いので、スプレッドは狭く設定されています。
スプレッドが広いリスキーな通貨
その一方で、需要が低く取引量が少ない通貨は市場の流動性が低いので、スプレッドは広くなる傾向があります。欲しい値段で取引に応じる取引相手が見つかりにいため、買いレート(ASK)が売りレート(BID)よりもかなり高く設定されているわけです。
初心者トレーダーも知っておきたい「配信率」
配信率とはなにか
スプレッドの説明で「配信率」という言葉を見かけことがあると思います。あるいはFX会社によって「配信実績」とか「提示率」という表記がされています。
配信率とは、「原則固定スプレッド」において、実際にそのスプレッドで配信されている割合を指します。たとえば(ドル/円)において、スプレッド(0.2銭)、配信率(98.97%)という表示であれば、(ドル/円)が(0.2銭)で提供されている割合が、全体の(98.97%)あるという意味です。
「原則固定」の意味するところ
スプレッドが「原則固定」というのは、「原則」から外れる可能性があることを意味しています。たとえば、重要な経済指標や政策の発表、天災などの突発的な事象の際などにスプレッドが広がるケースがあります。上掲の(ドル/円)の例では、原則固定のスプレッドが、不測の事態によって変動(広がる)リスクが(1.03%)あることを示しています。逆にいうと、スプレッドは(99%)変動しないということです。
このように(ドル/円)のような安定性の高い通貨ペアあれば、配信率は限りなく(100%)に近づきますが、マイナー通貨の配信率はグッと低くなります。
当然だがスプレッドは狭いほうがいい
スプレッドはトレーダーの負担ですから、当然ですが狭いほうが有利に決まっています。FX各社は顧客獲得のためにスプレッドを極力狭くしようとそれぞれ企業努力をしていて、その結果、メジャー通貨同士の通貨ペアではFX会社ごとにあまり差は生じていません。(ドル/円)に限っていえば、ほとんどどの会社でも(0.2銭)で変わらないと思います。
しかし、マイナー通貨の場合はかなり違いがあります。マイナー通貨はスリリングな値動きや金利の高さなどの魅力とは裏腹に、天変地異や国情の悪化など、思わぬトラブルが発生する可能性が高く、FX会社によってリスクの考え方が異なるのです。
初心者トレーダーにおススメしたいのは安定性が高く、費用面(スプレッド)において圧倒的に有利なメジャー通貨です。とりわけ(ドル/円)に限定すべきであると、猫道場主は強く思います。
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