Netflixのドラマ「イカゲーム」が世界中で人気を博しています。金銭的に困窮した人々が莫大な賞金を賭けたデスゲームに挑むサバイバルサスペンスで、興行旋風に乗じようとするさまざまな便乗商法も登場しています。
そのなかでも人気を集めていたのが、「イカゲーム」をヒントに開発された仮想通貨です。ところが、この仮想通貨が詐欺事件に発展するというニュースが飛び込んできました。
いわゆる「イカゲームコイン」とはどんなものか
「イカゲーム」のコンセプトを応用したゲームコイン
「イカゲームコイン」は正式名称を「スクイッドゲームコイン(SQUID)」といいます。
ドラマのコンセプトそのままに、SQUIDを購入した投資家がオンラインゲームで仮想通貨を奪い合うという画期的な仕組みにより、SQUIDは発売開始と同時に若者を中心に一気に人気を博しました。
いきなり高騰するSQUID
今年(2021年)10月26日にSQUIDが1コイン(9セント≒10円)の価格で売り出されると、わずか1秒で完売しました。
同日午前9時の段階で1コイン当たり(11.76ドル)まで跳ね上がり、取引から3日間で時価総額は(84億ドル)を突破しました。3日間で130倍も暴騰したということになります。
実はスタート当初から「危うさ」があった
ところが、SQUIDには憂慮すべき弱点がありました。換金化が複雑だったのです。
SQUIDを現金化するためには、一旦「Marbles token(マーブルトークン)」という別の暗号資産に交換してから現金化する必要がありました。マーブルトークンを手に入れるためにはSQUIDの開発者が主催するゲームトーナメントに出場し、勝利しなければなりません。
したがって、トーナメントが開催されるまでは、いくらSQUIDが値上がりしても売ることができず、ただ持ち続けなければなりませんでした。トーナメントの参加費は(456)SQUIDとされており、それ以下のSQUIDしか持っていない投資家はマーブルトークンを手に入れるためにSQUIDを買い増すか、現金化をあきらめるしかありませんでした。
やはり詐欺だった「イカゲームコイン」
ある日突然暴落するSQUID
一時コイン当たり2861ドル(約33万円)まで高騰したSQUIDでしたが、11月1日になって突然、たった5分の間に(0.00079ドル)に下落したというニュースが流れました。SQUIDがすべて現金化されたことによって、通貨価値がゼロになってしまったのです。
やはりSQUIDは詐欺だったのです。仮想通貨やゲームを運営するホームページが閉鎖されると、開発者とも連絡が取れない状態になってしまいました。
開発者によるラグプール詐欺
SQUID開発者は、SQUIDをすべて現金に交換して価値を下げるという、いわゆる「ラグプール詐欺」により、SQUIDをすべて現金化して逃走しました。
韓国メディアによれば、ラグプール詐欺の被害総額は200万ドル(約2億2700万円)に達したとしています。投資家のSQUIDの換金を困難にしていた仕組みも、当初から詐欺を目論んでいたからだったのでしょう。とんだ知能犯です。
詐欺事件が絶えない韓国社会
詐欺大国の汚名
2017年に日本の犯罪研究者が韓国の犯罪事情を調査したところ、韓国の人口10万人当たりの詐欺事件の発生件数は、日本の16倍にもなることがわかりました。
そのなかでもとりわけ増えているのが投資詐欺です。最近ではインターネットを使った投資詐欺や、今回の事例のような仮想通貨詐欺も登場しています。
一発逆転を狙う若者たち
こうした投資詐欺は富裕層や高齢者に限らず、経済の知識がない若者を狙った事件が増加傾向にあるといいます。
韓国国内では若年層の就職難が深刻な状況にあり、かれらは就職をあきらめて、借金をして不動産屋株式投資、FXや仮想通貨にのめり込むケースが多いといわれています。日本人の感性からすると信じがたいのですが、韓国国内では異常な現象だという捉え方は少ないようです。元来「投資(投機)を好む」という国民性が反映しているという分析もあります。
詐欺事件が減らない理由
韓国では強盗や殺人といった犯罪は減少傾向にありますが、詐欺事件は減るどころか増加し続けています。その理由は、先述のように投資好きな国民性が根底にあることとともに、「処罰が甘い」ことにあるのではないかといわれています。
被害金額が1億ウォン(約880万円)以下の一般詐欺では懲役(6か月~1年6か月)、悪質な場合でも最大で懲役(2年6か月)と非常に軽いのです。ちなみに日本の刑法では、詐欺罪は10年以下の懲役刑です。なかでも80%以上が実刑判決を受け、初犯でも実刑になる可能性が高いとされています。
とりわけ深刻なサイバー詐欺
韓国ではインターネットやSNSを悪用したサイバー犯罪の発生が2020年までの過去4年間で2倍に増加し、その一方で検挙率は低下傾向にあります。仮想通貨を利用したボイスフィッシング詐欺が巧妙化するなど、犯罪の手法の進化により検挙が難しくなってきているのが現状です。
日本でも起こり得る仮想通貨詐欺
統計的に示されている日本国内の投資詐欺被害者の多くは、経済的に困窮している人や在宅主婦です。投資詐欺に遭わないようにするためには、詐欺関連の事件の実態を知ることが重要です。その際は、以下のチェックリストに注目しましょう。
●セミナーでの「絶対に上がる」「金融庁推薦」などの甘言による勧誘 ●情報が不明確、非現実的な謳い文句の仮想通貨 ●限定販売されている仮想通貨 ●「一定の値段より絶対に下がらない」という価格保証がされている仮想通貨
これらのチェックリストのうち、どれかひとつでも当てはまれば詐欺コインを疑うべきです。値段が絶対に下がらない金融商品など、あるはずがありません。このように甘い謳い文句に気をつけなければならないのは、投資に限らずどんな世界でも同じことだと思います。詐欺には充分気をつけてください。
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