時代の寵児だった「日本で一番ポンドを持つ男」はその後どうなったのか

初心者を狙う罠

2007年、埼玉県内で金属スクラップ販売業「磯貝商店」を営んでいた磯貝清明さん(当時30歳)は「日本で一番ポンドを持つ男」と呼ばれていました。その当時、テレビでも大きく取り上げられたこともあるので、記憶に残っている人もいると思います。磯貝氏はFXで莫大なポンドを保有していたことからそのように呼ばれていました。

その後、FX市場は度々大きな変動を経験しました。磯貝さんがその後どうなっていったのか、FXにチャレンジしている人なら誰しも興味があると思います。今回はいくつかのインタビュー記事から、磯貝さんの足跡をたどってみることにしましょう。

磯貝さんのFXトレードの足跡

磯貝さんがFXを始めたきっかけ

磯貝さんがFXを始めたのは、1998年に父親が亡くなって家業のスクラップ業「磯貝商店」の経営を引き継いだときでした。父親の残した名刺の束のなかにあった商品先物取引会社に電話をかけたのが発端です。

投資のトの字も知らなかった磯貝さんでしたが、営業マンのセールストークに「そんなに儲かるなら」と話に乗ったのが、磯貝さんがFXの世界に入ったきっかけです。投資の元手は父親の死亡保険金1000万円でした。

当初は破竹の勢いで資産が増えていった

当初、磯貝さんはスワップポイント狙いで円を売ってドルを買っていました。実質ゼロ金利の日本に対して米国の政策金利は(約1%)でした。100万円の元手に10倍のレバレッジをきかせて10万ドルのドルを買っていた磯貝さんの口座には、毎日300円ずつ入金があり、投資初心者の磯貝さんは驚くばかりでした。この当時の為替相場が「円安ドル高」に動いたことで為替差益も膨らんでいき、収益はさらに拡大していきました。

磯貝さんはすっかりFXにのめり込み、今度は英ポンドに目をつけます。ポンドは日々の値動きが大きく、政策金利も(4%)と高いことから、ドルよりも魅力的に見えました。

このときの状況を磯貝さんは次のように証言しています。

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「(ポンド取引で)1年目で約1200万円も利益が出ました。その利益を証拠金に回してポンドを買い増すと、2年目にはなんと利益が1億円を突破しました。取引額を増やしているうちに、利用しているFX取引会社でナンバーワンの顧客になっていて、専用のホットラインまで引いてくれるようになりました」。

FX長者となった磯貝さんの日常

やがて磯貝さんは家賃80万円の六本木ヒルズに住居を構え、高級会員制クラブ「六本木ヒルズクラブ」にも入会しました。イタリアの高級外車ランボルギーニを2台(合計3,500万円)所有し、FXを通じて知り合った仲間を呼んでは連日のようにパーティーを開催し、飲食代だけで年間2,000万円使っていたと証言しています。

もっとも、磯貝さんはFXで成功しても磯貝商店の仕事をやめたわけではなく、毎朝愛車に乗って六本木から川口市まで通っていたといいます。

資産はピークを迎えた

2007年7月には磯貝さんの保有するポンド資産は(1億ポンド)に達していました。当時の為替レートで計算すると250億円に上ります。まさに「日本で一番ポンドを持つ男」の面目躍如とです。

レバレッジを除いた磯貝さんの実質的な資産である証拠金は10億円に達していました。約9年間で、父親の遺産(1,000万円)が100倍になったわけです。ところが好事魔多し。このときにはまさか、資産をすべて失うことになるとは磯貝さんは夢にも思わなかったでしょう。

サブプライムローンが直撃する

しかし、絶頂期は長続きしませんでした。資産が10億円のピークをつけたわずか数日後にポンドが急落したことにより、10億円あった磯貝さんの資産は一晩で6億円に目減りしてしまいました。そこに追い打ちをかけたのが、翌8月のサブプライムローンショックでした。

ポンドは(250円⇒220円)へと急落(円高)し、磯貝さんの資産は9月の段階で3000万円にまで激減してしまったのです。このときの磯貝氏のコメントです。

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「当時の目標は資産を100億円に増やすことでした。パソコンの画面で自分が損をしていることがわかっていても、『明日には反転するだろう』とふて寝を決め込み、朝起きたら損が膨らんでいる。損切りの決断がつかなかったことが最大の失敗でした」。

磯貝さんは資産のほとんどを失いましたが、それですべて終わりではありませんでした。翌2008年には国税局から所得隠しを指摘され、磯貝さんは重加算税や刑事罰の罰金をあわせ、3億円の支払いを命じられました。

六本木ヒルズを追われた磯貝氏

家業へと回帰する

資産のほとんどを失って六本木ヒルズを引き払った磯貝さんは、自身が経営する埼玉県の「磯貝商店」にあるわずか2畳ほどのスペースに引っ越しました。

3億円の負債を負った磯貝さんですが、自己破産は選択しませんでした。工場の設備の一部を売却し、従業員も解雇して、たったひとりでの再出発となりました。国税局から告発された直後は「FXで作った借りはFXで返す」を息巻いていた磯貝氏でしたが、実際にトレードに再チャレンジしても元手資金の乏しい状態での取引がうまくいくはずもなく、本業のスクラップ業で返済することを決めました。

地道に借金返済を目指す生活へ

FXで財を成した磯貝氏は経営センスにも恵まれていたのかもしれません。アベノミクスの追い風に加え、2014年に結婚した妻の支えもあって、2017年時点の借金は5,000万円を切ったそうです。もしかすると現在(2021年)はほぼ完済に近づいているかもしれません。

かつてのFX長者から学ぶこと

勢いに乗って勝ちトレードを続けていても、ちょっとした躓きでガラガラと崩れてしまうのがFXの怖さです。

磯貝さんの決定的な過ちは「戦略の不在」と「実力以上の勝負」という2点にありました。厳しい言い方になりますが、FXへの取り組み姿勢が間違っていたとしか言いようがありません。

直接的な大損失の原因は、磯貝さん自身のコメントにもあるように「適切に損切りできなかったこと」であり、掛金がいくらであっても、結局はここに行きつきます。これから本格的にトレードに取り組む初心者も、このことを心に刻み込んでおきましょう。


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FX超初心者専科 猫道場 道場主H

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FXトレードは知識や経験の差によって、結果に大きな差がでます。 多くの人が1年以内にトレードから撤退していますが、その原因の多くはやはり知識や経験の少なさによるものです。 FXはボードゲーム(将棋やチェスなど)に例えられることがあります。 どんなゲームでも基本が身についていなければ、相手に勝つことはできません。 孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。 戦いに勝つためには、まず相手のことを知らなければならないという意味です。 FXにおいて、みなさんが戦う相手は、「市場(しじょう)」という大きな敵です。 市場と戦うための知識の入り口として、ぜひこのサイトを役立てていただきたいのです。 そして、経験についてはトレードを積み重ねることによってしか得られません。 みなさんにはご自分の資力の範囲で、無理のないトレードを開始していただきたいと思います。 「はじめに」でも触れましたが、FXトレードは奥が深いものです。 将来の勝ち組を目指して、また、その過程で経験するであろうFXの怖さやワクワク感をぜひ堪能してほしいと思います。 どんなゲームにもビギナーズラックがありますが、そのような幸運は長くは続かないことを知り、くれぐれも丁半博打のような無謀なトレードをしないように気をつけてください。

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