「為替操作国」と「為替操作監視対象国」のカラクリを知る

テクニカル編

一般的に「為替操作国」とは、自国の輸出に有利になるように意図的に通貨安を誘導している国をいいます。G20サミットの首脳宣言にも、「為替操作を避けるべき」との文言が盛り込まれるなど、為替操作は国際的にも問題視されています。各国の中央銀行の人為的な通貨介入は望ましくないというのは世界のコンセンサスといっていいでしょう。

しかし、現実世界におけるいわゆる「為替操作国」というのは世界共通の合意ではなく、アメリカ議会が定めた基準であることを知っている人は多くないかもしれません。今回は、アメリカの「為替操作国」認定の現状を学習していきましょう。為替相場に影響を与えるファンダメンタルズの一要素としても注目しておきたいテーマです。

「為替操作国」とはアメリカ議会の決定によるもの

アメリカ財務省の為替政策報告書

アメリカ財務省は、1988年から毎年2回、議会に対して「為替政策報告書」を提出しています。アメリカ議会はその報告書に基づいて、対米通商を有利にすることを目的に為替介入して為替相場を不当に操作している国を名指しし、「為替操作国」および「為替操作監視対象国」に認定しています。

為替操作国の基準

為替操作国に認定された国は、アメリカとの二国間協議により通貨の切り上げを要求されるほか、必要に応じて関税強化などの制裁を科せられるオプションも定められています。

これらの認定は、次の3つの基準によっておこなわれています。

・対アメリカの貿易黒字が200億ドル以上
・一方的な為替介入で外貨の購入を継続的におこない、その総額がGDPの(2%)以上
・経常黒字がGDP比の(2%)以上

「為替操作国」認定

このうち2項目に該当すれば「為替操作監視対象国」の対象になり、3項目すべてに該当すれば「為替操作国」に認定するとされています。

2021年12月の議会報告では「為替操作国」の認定はありませんでしたが、中国、韓国、ドイツ、イタリア、アイルランド、インド、マレーシア、シンガポール、タイ、メキシコとともに、日本も「為替操作監視対象国」に指定されています。

関税引き上げから米中摩擦が勃発

はじまりはトランプ大統領就任

米中摩擦のきっかけは、2018年のトランプ大統領就任時に遡ります。最初にトランプ大統領が問題視したのは中国の鉄鋼製品でした。この年の3月、アメリカは突然、中国の鉄鋼製品に(25%)の関税をかけると宣言したのです。

鉄鋼製品に始まった関税強化はその後さまざまな中国からの輸入製品を対象とし、総額500憶ドル分まで拡大しました。

エスカレートする関税合戦

中国はアメリカ製品に800品目500憶ドル分の関税をかけて対抗しました。アメリカはそれに対抗してさらに2000億ドルの関税をかけ、中国も600億ドルの関税で対抗するなど、泥仕合の様相を呈してきました。

アメリカ経済界は政府の方針に対しておおむね肯定的でした。中国がアメリカの企業秘密を盗み出し、電子部品やAI技術などの重要技術を不正に入手しているとして、問題視している人が多くいたのです。さらに、中国の軍事的脅威や人権問題にも世界の冷たい視線が集まりました。

中国を為替操作国に認定

2019年8月にアメリカは中国を「為替操作国」に認定しました。

トランプ大統領は、中国が自国通貨安を誘導しているという強い疑いをもっていました。それに対して中国は、「意図的に人民元安に誘導したことはない」と強く反発し、両国の対立はさらに深まっていきました。

しかし、「為替操作国」認定には中国にも「一分の理」がありました。それは、認定条件のうち、その額は突出しているとはいえ対米貿易黒字の項目しか該当していなかったからです。

現在は小康状態に

米国と中国の関税引き上げ合戦は、2020年1月に米中通商合意の署名直前に「為替操作国」認定が解除となったため、一旦終結しました。中国は「為替操作監視対象国」に戻り、対中戦略はバイデン大統領に託されました。

日本の「為替操作監視対象国」指定はどうなるか

「為替操作監視対象国」はさらに拡大するか

バイデン政権となっても、日本や中国を含む11か国の「監視対象」は継続されています。協調派とみられているバイデン政権ですが、あらたにスイス、ベトナム、台湾を「為替操作監視対象国(地域)」に加えることも検討しています。

コロナパンデミックの影響

米財務省当局者は、各国における感染拡大による経済への影響や財政金融政策を考慮したうえで、「為替操作監視対象国」の認定を決めたと説明しています。

コロナ禍がなければ、スイス、ベトナム、台湾に対する対応を含めて「異なる結果が出ていた可能性がある」と述べていることからも、監視の目は厳しくなっているように感じられます。

今後の円相場の展望

アメリカ財務省からは、人民元安などの課題とともに日本との貿易不均衡に対する懸念が報告されていることもあって、今後も日本に対する為替監視を緩めることはないでしょう。アメリカ財務省やFRBは対円のドル高について抑制的であるべきだと考えているはずです。

検討すべき指標はほかにもありますが、このことが長期的な(ドル/円)に影響を与える可能性は充分あり得ます。


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FX超初心者専科 猫道場 道場主H

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