かつて発生した株価やFXの大暴落では多くの投資家が退場を余儀なくされましたが、その一方で大きな財を成したトレーダーもいました。
また為替が大暴落したあと、いずれは反動で値が戻ってくることは予想できそうなものですが、実際にそのような作戦をとることができた事例はほとんど耳にしません。それはなぜでしょうか。
今回は、為替の暴落後における投資家の行動分析からその不思議に迫っていきたいと思います。
FX相場の大暴落はいずれかのタイミングで必ず起こる
過去には以下のような為替の大暴落や変動が発生しています。下記のように、およそ5~10年に一度ぐらいの頻度で大きな事件が起こっているので、近い将来にまた歴史的な為替相場の暴落が起こることは間違いないでしょう。
1995年 | 阪神淡路大震災 | (円高ドル安) |
1998年 | ロシア通貨危機 | (ルーブル暴落、ドル安) |
2008年 | リーマンショック | (ドル暴落) |
2010年 | ユーロ危機 | (ユーロ暴落) |
2015年 | スイスフランショック | (スイスフラン暴落) |
2020年 | 新型コロナウイルス流行 | (ドル安) |
2021年現在、コロナパンデミックの影響による半導体の供給不足などから世界的な先端産業の停滞が続いていることや、中国発の不動産業の巨額な損失などの不安要素も、近未来の為替相場に不安な影を落としている要因です。
リーマンショック後に投資家が積極的にトレードをしなかった理由
リーマンショックでは倒産やリストラで仕事がなくなることを余儀なくされた方も多く、派遣切りが社会問題になりました。ニュースでたびたび取り上げられた派遣村を記憶している人も多いのではないでしょうか。
リーマンショックで大多数の投資家が姿を消した
リーマンショック前にも投資ブームがありました。当時は仮想通貨は存在せず、高いレバレッジを効かせたFXが流行していました。トルコリラ、南アフリカランドといったハイリスク通貨のトレードも大人気でした。
しかし、リーマンショック後は既存の投資家の多くが資金を失って市場から退場し、あらたに投資を始めようという人はほとんど現れませんでした。
底が見えない状況で投資に向かうのは非常に難しい
リーマンショック当時の2008~2011年頃は、大企業から中小企業まで、給与やボーナス削減がおこなわれ、派遣切りや新卒採用の見送り、内定取り消しなどが目立ちました。
このような社会状況のなかで、個人が最初に削る支出のひとつが「投資」です。潜在的に投資に興味をもっている人であっても、勤め先の倒産やリストラの危機を目の前にして投資をする勇気が湧くのは、ごく少数派なのではないでしょうか。
リーマンショック後、日経平均は1万円を割り込み、1ドル80円台という状況になりました。こうなると、時代を生きている普通の人間はこの状況に慣れてしまいます。
多くの人は(ドル=80円)が底値とは思えず、「ドルはまだこれから下がる可能性もある」というパニック的な危機意識をもっていました。いずれ値が戻る可能性を信じることができず、ほとんんどの人が事態が悪化することしか考えられなかったのです。
リーマンショックで大儲けしたのはどんな人たちか
相場の恐怖を知らない富裕層の高齢者たち
リーマンショックではFXや株が大暴落して大損した人が多いなか、大儲けした人もいました。大儲けしたのは、「金融資産を1億円以上もつ高齢者たち」です。
リーマンショック後、株式やFXセミナーを開いた証券幹部によると、「参加した熟年の富裕者はセミナーの勧誘に対して、まるで大根でも買うような感覚で『1ドルが80円なんて安くてヨダレが出ちゃう。ユーロも下がったから買っちゃおう』とホイホイ買っていた」と当時の様子を語っています。
一般人が(ドル=80円)に底値を見いだせなかったのに、かれらは見いだすことができました。それはなぜでしょうか。
資産家ゆえの戦法
リーマンショックで損をしたのは、証拠金の何十倍ものレバレッジを利かせて取引していたトレーダーです。かれらは相場が数円振れるだけで大損するようなリスキーなトレードをしていました。
しかし、ここで紹介した富裕層はそんな無理はしません。レバレッジを大きく効かせず、ドルの値動きが50円以上発生しても損しないような超堅実な買い方をしていました。したがって、多少の値動きがあっても慌てて売る必要はなく、ひたすら円安になるのを待つことができたわけです。
かれらにとってはリーマンショックも円高も株安もへっちゃらどころか、大歓迎だったのです。
為替の暴落に賭けた「一か八か」はかならず破滅する
もし1億円の余剰資金があれば、「いつか暴落がきたら全力でリスク資産を買う」という選択が可能かもしれません。しかしそれは資本の裏付けがあってのことです。資金に余裕のない一般的なトレーダーが富裕層と同じように「ひたすら値戻りを待つ」戦略は選択できません。値戻りよりもロスカットの方が先にやってくるからです。
一般的なトレーダーは、いつか訪れるかもしれない経済情勢の急変にも対応できるように、支出をコンパクトにして堅実な投資を続けることが重要です。投資の成功の秘訣は、とにかく市場に残り続けることだと思います。
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