アジア通貨危機の教訓からファンダメンタルズの重要性を学ぶ

FXの基礎編

1997年7月にタイを震源地としてアジア各国に広がった通貨の暴落および経済危機を「アジア通貨危機」と呼びます。

1980年代以降、めざましい経済成長を続けていた東南アジア諸国では金融自由化がすすみ、海外から多額の資本が流入しました。このような状況下で1997年にタイの通貨バーツが突如暴落し、東南アジア各国や韓国などにもその影響が広がったのです。

今回はアジア通貨危機の記憶から、FXトレーダーが読み取ることができる教訓を解説していきます。

アジア通貨危機の遠因

成長する東南アジア経済とタイの産業構造

1985年のプラザ合意以降、急速に円高が進行し、日本企業はこぞってコスト削減のために海外への生産移転をすすめました。

多くの日系企業が東南アジア地域へ工場を移転しましたが、とくに目立ったのは自動車メーカーのタイへの進出でした。世界規模の需要拡大により、タイの自動車産業は、一時は生産が追いつかないほどの活況を呈しました。ところが好事魔多し。資本財や中間財を自国で生産できず、海外からの輸入に頼らざるを得ないというタイの産業構造は、のちのち90年代後半の経常収支の赤字に繋がっていくのです。

タイの躍進を支えた2つの金融政策

世界的な需要拡大とともにタイの経済成長を支えたのは、「オフショア市場」と「ドルペッグ制」という独自の2つの金融政策です。

オフショア市場

タイには「国内市場」と「オフショア市場」という2つの市場があります。オフショア市場とは外国との取引において国内市場のルールとは異なる規制や課税方式を適用する「非居住者向けの市場」のことです。オフショア市場には海外からの投資を誘致するための有利な条件が整っています。

ドルペッグ制

通常、海外からの借り入れをする場合には、為替変動によるリスクがあります。しかしタイは、自国通貨の価値を米ドルと連動させるドルペッグ制を採用して、為替変動リスクを回避していました。

当時のタイは(ドル=26バーツ)付近で為替レートが固定されていました。ドルペッグ制が採用されている限りバーツが極端に下落する可能性はありません。

流入する海外資本

オフショア市場とドルペッグ制の採用によって、タイには多くの海外資本が流入しました。90年代、タイの外貨流入総額はGDPの(50%)まで達していたといわれています。

流入した資本の多くは不動産などの投機的な商品に投資され、タイに金融バブルをもたらしました。

好調なタイ経済に次第に危険な兆候が現れる

タイ経済の成長を妨げるもの

急激な経済成長を記録していたタイですが、1996年の経済成長率は前年から(3%)と鈍化しました。その理由は3つあります。

・急速な経済成長に伴う賃金上昇
・中国人民元の大幅切り下げによるASEAN諸国の輸出競争力低下
・アメリカが打ち出した「強いドル政策」

とくに影響が大きかったのが「強いドル政策」です。強いドルが米国経済の成長を牽引するという考え方に則り、ドル高を誘導する政策です。ドル高が進むとドルペッグ制を採用しているバーツも連動して上昇するため、輸出にとって不利な状況が広がりました。

経常収支が赤字に転落する

これまでも、輸出製品に用いる資本財や中間財のほとんどを輸入に頼るタイの産業構造の脆弱性は問題視されていました。経常収支は輸出より輸入が多ければ赤字が拡大します。強いドル政策によるバーツ高によってタイは輸出競争力を失い、経常収支は赤字に転落しました。

ついにアジア通貨危機が勃発する

ヘッジファンドのターゲットになる

タイの経済成長には限界が近づいてきました。経済成長が減速しても、ドルペッグ制によってタイバーツの為替レートは一定です。このミスマッチに目をつけたのがヘッジファンドでした。

ヘッジファンドはタイが現状の為替レートを維持するのは不可能と判断し、1997年5月に突如バーツに空売りを仕掛けました。バーツを大量に売却し、暴落した後で買い戻せば為替差益により莫大な利潤を獲得できます。

タイ政府にはバーツを支える力がなかった

ヘッジファンドに空売りされ、市場にはバーツが溢れました。タイ政府がドルペッグ制を維持するためには、バーツ買いドル売り介入をしなければなりません。しかし、タイ政府の外貨準備高は底をつき、ヘッジファンドの攻撃を耐えることができませんでした。

ついにドルペッグ制から変動相場制への移行を強いられ、その結果、バーツは対ドル相場で急落してしまいました。

ASEAN諸国や韓国に通貨危機が波及

タイのバブル崩壊はマレーシア、インドネシア、韓国に飛び火し、通貨危機が急速に深刻化し、金融バブルがはじけ、多額の不良債権が発生しました。いずれの国々もタイと似た産業構造をもっていたからです。

アジア通貨危機の教訓

脆弱な金融制度に隙があった

1985年9月にアメリカのドル高を是正するために先進諸国間で交わされたプラザ合意以後、円高などによって先進国から発展途上国への直接的な投資が増加しました。タイにも海外からの製造業投資が急増し、大量の資金が流入しました。

それと同時に世界中から投機的資金も流入し、証券市場や不動産価格が高騰し、実体経済とかけ離れたバブル状態になりました。それに加えて、投機的投資に対するタイの金融制度の脆弱性があったことが、破滅的な金融危機を招いた原因であると考えられています。このような状況は新興国全体に共通する弱点でした。

投資家がアメリカの金融政策に注目しなければならない理由

アジア通貨危機の教訓はドルに依存し過ぎることの危険性です。新興国が自国の経済発展のためにドルを借り入れ、アメリカの政策変更によって経済が停滞するという構図は、1994年にメキシコで発生した「テキーラ・ショック」にも見ることができます。

2000年代前半のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックでは100年に一度といわれる世界同時不況をもたらしました。株式市場においてアメリカの金融政策の影響力は大きく、投資家はその動向に充分な注意を払わなければなりません。


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FX超初心者専科 猫道場 道場主H

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