FXで語られる「通貨の流動性」は為替の動きを見渡す基本的な指標ですが、正しく理解している初心者は少ないように思います。どんなときに流動性が高まり減少していくのか、そのメカニズムを知ることによって、FXの理解はずっと深まるはずです。
「通貨の流動性」とは
FX市場における「流動性」をひと言でいい表すとすれば、「市場参加者の多さ」と考えると理解しやすいでしょう。具体的には、取引量が多く売買の相手がすぐに見つかる状態を「流動性が高い」といい、取引量が少なく売買の相手が少ない状態を「流動性が低い」といいます。
流動性には「通貨の種類による流動性」と「時間帯や相場の状況による流動性」の2種類があります。
通貨の流動性とは流通量のこと
(ユーロ/ドル)や(ドル/円)といったメジャーな通貨ペアは市場参加者が多いので流動性の高い通貨ペアといえます。これに対して、(南アフリカランド/円)や(トルコリラ/円)といったマイナーな通貨ペアは市場参加者が少ないので、流動性は低いです。
流動性の大小と為替の値動き
FX市場では売る人と買う人が出会うことによって価格が決定します。(取引量が多い=市場参加者が多い)通貨ペアは、市場ですぐに売りたい人、買いたい人を見つけることができるので、値動きは比較的滑らかになる傾向があります。
一方で取引量の少ない通貨ペアは市場で取引相手を見つけることが難しいので、取引が決まるまでに時間がかかります。注文してから価格が決まるまでの値幅の差が広くなるので、必然的に値動きが荒くなる傾向があります。
時間帯や相場の状況による流動性
FX市場では24時間取引をおこなうことができますが、相場参加者が多い時間帯と少ない時間帯があります。取引量の多い主要国の通貨ペアの場合も、流動性の低い時間帯では値動きが荒くなる傾向があります。
各国の祝日は相場が立たないので、流動性に大きく影響します。東京、シンガポールが祝日の東京時間、英国が祝日のロンドン時間、米国が祝日のニューヨーク時間はいずれも市場参加者が少なく、流動性が低くなります。また、クリスマスから年末年始にかけての期間やイースターシーズンなどは日中を通して相場参加者が少なく、閑散とした相場が続きます。
FX市場が注目する大きなイベント(経済指標の発表前や大統領選挙前など)の前も積極的な取引が減少するため、流動性が低下する傾向があります。
流動性にともなう思わぬリスク
当たり前のことですが、「売買」というのは買いたい人がいるから売ることができ、売りたい人がいるから買うことができます。市場は需要と供給のバランスで成り立っていて、その物を買いたい人が増えれば価格はどんどん吊り上がり、その反対であれば安い値段で叩き売りされます。
なぜスプレッドが開くのか
流動性が低下すると「スプレッド」が開きやすくなります。
相場の急激な動きは、どちらか一方の注文が殺到していることを表します。FX会社はインターバンクを経由して外貨取引をおこなっていますが、インターバンクが提供する当該外貨の価格は、偏った需給バランスを反映して買値(Ask)と売値(Bid)の差が大きく広がってしまうのです。
値動きが荒れやすくなる理由
市場参加者が多ければ段階的に取引が成立していく可能性も高く、比較的値動きは緩やかになりやすいですが、市場参加者が少ないと一気に価格が動いてしまう可能性も高まります。極端な例ですが、売り注文が10口あった場合の値動き率を単純比較してみましょう。
A(市場参加者が1000の場合の値動き):(1000-10=990)⇒全体の1.0% B(市場参加者が100の場合の値動き):(100-10=90)⇒全体の10%
(ドル/円=100円)の相場に当てはめてみれば、Aでは(99円)になるところ、Bでは(90円)になります。
月曜日や年末年始の「窓開き」に注意すべき理由
為替市場がクローズしている週末にさまざまな事件事故が発生し、金曜日の終値から大きく乖離したレートで月曜日の取引が開始される場合があります。これを「窓が開く」といい、流動性に起因するリスクです。「窓開き」はクリスマスから年末年始にかけての期間にも発生します。
「窓開き=値が飛んだ状態」が大きくストップロス注文やロスカットが間に合わないと、証拠金の元本を上回る損失が発生する場合もあります。
売買自体が成立しなくなる
相場が大暴落を起こした時には売り注文が集中しますが、買い手がいないため、取引がほとんど成立しなくなります。戦争、自然災害、デフォルトなどさまざまな要因によって、売買が成立せず市場は混乱状態を呈します。
流動性リスク対策
できるだけ市場参加者の多い通貨ペアを選ぶ
流動性リスクを抑えるためには、市場参加者の絶対数が多い通貨ペアでトレードしましょう。とくに初心者の場合は、必然的にマイナー通貨を避けるべきという結論になります。取引高の多い通貨ペアは情報量も多く、実際にトリッキーな値動きも少ないので、流動性の小さい通貨ペアよりも危険度は低減できるはずです。
ファンダメンタルズに注目する
事前にわかっている重要な経済指標の発表の前はトレードを控えましょう。とくに、「米雇用統計」「米FOMC政策金利」が発表される直前はポジションをもたないようにすべきです。
もちろん、予想できない事件事故、自然災害などの発生によって相場が大きく動くこともあるので、突発事件や事故の可能性を心の中で準備しておく姿勢が重要です。また、投資する各国の政治経済状況や選挙など、主要な情報にはできるだけアンテナを張るようにしましょう。
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