「ゼロカットシステム」はトレーダーにとって有利な仕組みのひとつなのですが、仕組みを正しく理解してないトレーダーも多くいるようです。今回はゼロカットシステムの仕組みや注意点について詳しく解説しますので、FX口座選びの参考にしていただければと思います。
ゼロカットシステムとはなにか
トレーダーの損失を限定してくれるお得な仕組み
「ゼロカットシステム」は、口座に入金した金額以上の損失分をFX会社が補填する仕組みです。
たとえば、証拠金が(10万円)の場合、相場の変動によってロスカットが間に合わず、(15万円)の損失を被ったとします。普通のFX会社は証拠金で足りない分(5万円)をトレーダーに請求します。しかしゼロカットシステムの会社は、証拠金(10万円)分以上の損失については一切請求しません。最悪の事態でもトレーダーは借金を背負うことはありません。
ゼロカットシステムと追証
多くの初心者が勘違いしているのは、ゼロカットを採用しているFX会社にも「追証」があるということです。証拠金以下で決済できる範囲の損失(たとえば8万円)は追証の対象です。あくまでもゼロカットは、証拠金を越える損失を請求しないというだけの話です。
ゼロカットシステムを採用しているのは海外のFX会社だけ
ゼロカットシステムを採用しているのはすべて海外のFX会社で、国内のFX会社で採用しているところはありません。
日本国内のFX会社がゼロカットシステムを導入しない理由
なぜなら日本国内のFX会社は法律(金融商品取引法)によって「FX会社は顧客の損失を補填してはいけない」とされているからです。
しかし海外のFX業者は日本の法律外で運営しているので、日本国内の顧客に対してもゼロカットシステムを運用することが可能です。
ゼロカットシステムを導入しているFX会社の特徴
FX会社には「DD方式」と「NDD方式」という二種類があります。これは注文方法の違いを表しています。
・DD方式⇒顧客とFX会社とが相対取引をする ・NDD方式⇒顧客の注文をインターバンクへ流す
DD方式の会社は顧客の注文をインターバンクへ流さずに自社のディーリングデスク内で処理します。実際には注文をしない「ノミ行為」をおこなっているのです。
・証拠金10万円で(ドル=100円)で(1万通貨)の買い注文を入れる ・(ドル/円)が(100円⇒82円)に暴落する ・(100万円⇒82万円)に下がり、顧客は(18万円)損失する
NDD方式であれば(8万円)の追証を顧客に請求しますが、DD方式では証拠金の(10万円)を没収しただけで、顧客に対してそれ以上の請求はしません。
FX会社は実際には注文を出していないので為替差損の実害がないのです。そのため、マイナス分を証拠金に限定して顧客の損失を補填(ゼロカット)することができるわけです。
FX会社がゼロカットシステムを導入するメリット
顧客獲得のため
ゼロカットシステムを導入する最大の理由は顧客誘致のためです。FX会社は顧客に多く取引してもらえば手数料で儲かります。ゼロカットシステムを導入して取引に対する安心感を抱いてもらうことで、顧客を多く獲得したいというのがFX会社の思惑です。
実際にはゼロカットはほとんど作動しない
実際のトレードではゼロカットに至る前にロスカットが執行されるケースがほとんどで、そもそもゼロカット発動は稀有な出来事なのです。ゼロカットが働く場面というのは、数年に一度発生するような為替の大変動か、トレーダーの無理なトレードが原因です。
ゼロカットシステムと「両建て」の関係性
「ゼロカット+両建て」は必勝戦術か
「両建て」とは同じ通貨ペアで「売り」と「買い」両方のポジションを同時に持つ戦術で、「ゼロカットを利用した両建ては必勝法である」という説があります。
証拠金(10万円)で両建てをした場合に、相場が急落(50万円)してゼロカットが発動すると、トレード結果は以下のようになります。
・買いポジション⇒(マイナス50万円) ・売りポジション⇒(プラス50万円)
(50万円)の「含み損」と「含み益」が同時に発生し、本来であれば損益はゼロですが、ゼロカットシステムがあると事情が異なります。
証拠金は(10万円)しかないので、ゼロカットが発動すると損失は(10万円)だけです。その一方で利益は(50万円)になるので、差益が(40万円)発生することになるのです。
両建ては無敵の戦略か
「両建て戦術は無敵だ」といいたいところですが、現実はそう上手くいきません。都合よく強制ロスカットが間に合わないような相場の急変動が起こることは稀であり、ゼロカットより先にロスカットが執行される確率の方が圧倒的に高いからです。
またほとんどのFX会社は、以下のようなゼロカットの盲点を突いた両建て戦術を禁止しています。
・複数口座間での両建ての禁止 ・複数のFX会社を利用した両建ての禁止 ・友人やグループ内での両建ての禁止 ・週明けの「窓開け」狙いの両建ての禁止
規約違反の手法が見つかると口座凍結もあり得ます。両建てをする前には、かならずFX会社の利用規約を確認してください。
悪質な業者に注意
ロスカットシステムに日本の法規制の網がかけられている理由は、これらのFX会社が実質的な「ノミ行為」をしていることが大きいでしょう。
ネットでは、トレーダーが利益を出すと口座が一時的に凍結されるといったトラブル事例も目にします。かつては「ノミ行為」で集めた資金の運用に失敗し、逃亡した悪質業者もいました。このようなケースで投資家を救済する仕組みはありません。
猫道場では海外FX会社をあまりおススメしていません。ゼロカットシステム自体はトレーダーにとって有利な仕組みですが、実際にゼロカットが発動するケースは考えにくいことや、それを扱うFX会社には上記のようなリスクがあることも知っておきましょう。
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