FXの為替予想をおこなうために「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」という2つの流れがあります。ファンダメンタル分析は「理由のあと付け」にすぎないという批判を受けることがある一方で、「テクニカル分析はオカルトである」という意見もよく聞かれます。
そこで今回は、「テクニカル分析がオカルトか否か」という主張を分析していきたいと思います。
テクニカル分析はオカルトである
テクニカル分析がオカルトであるといわれる最大の理由は「数理的な裏付けが取れない」ことです。
学術の世界で無視され続けてきたテクニカル分析
チャート分析は実務の世界で経験則的に培われてきたもので、これまでも学術の世界では完全に無視されてきました。チャート分析の大前提となっているのが、将来の相場変動は過去の値動きに大きな影響を受けるという考え方です。学術の世界でチャート分析が無視されているというのは、まさにこの点にあります。
金融理論においては、相場の将来の変動は純粋な確率論の問題であり、過去の値動きとは一切無関係であることが常識となっています。
ランダムなデータでもそれらしい結論を導き出せる
テクニカル分析で一番厄介なのは、ランダムなデータを分析してもそれらしい結果が出てしまうということです。
どんなデータでも、恣意的な数値だけを切り取れば法則性を導くことが可能です。データの分布の範囲内では数値の偏りが一定の確率で発生するため、たとえば「このデータは波形を描くだろう」という思惑のもとで都合のいい数値をチョイスすれば、波形をつくり出すことも可能なのです。
見方や基準を変えればいかようにも判断できる
テクニカル分析は外れることもあり、示したサイン通りに相場が展開することもあります。要するに、当たり外れどちらも起こり得ます。
予想が外れた結果だけを見れば「テクニカル分析は意味がない」ということになります。それとは逆に、テクニカル分析を信じる人の脳裏には予想的中という結果だけが残るため、その有効性がしっかりと心に刻まれます。あるいは予想が外れた場合についても、さまざまな種類があるテクニカル分析のどれかを持ち出して組み合わせてみれば、「やっぱりテクニカル分析は正しい」と後づけで説明がついてしまいます。
それでもテクニカル分析が支持される理由
感覚的に理解しやすい
しかし、過去の値動きが将来の値動きに影響を与えるという考え方は、感覚的には納得しやすいものです。たとえば、原因が何であれ大きく値が下がった後には相場が不安定になり、その後もさらに下げやすくなると考えるのは自然な感覚だと思います。
テクニカル分析で成功を収めた投資家も少なからずいるという事実
テクニカル分析の背景をなすもうひとつの重要な考え方は、チャートを見た投資家たちの個別の投資行動や市場の気分といった心理的な要因に至るまで、為替を動かすあらゆる要素が過去のチャートに織り込まれていると考えられるというものです。
多くの成功したトレーダーはテクニカル分析を重視しています。トレードチャンスを見つけるためには、それ以外の方法がないからです。そして、実際にテクニカル分析を駆使して市場で成功を収めている投資家が実際に存在していることが、その有効性に対する説得力を高めているのです。
多くの人が意識することで予測が成立する
テクニカル分析がオカルトであるという主張に対して、テクニカル分析の理論的な根拠そのものは希薄であっても、多くの人に普及することによって、結果的に有効に働くという反論が有力です。
その一例として「フィボナッチ数列」があります。フィボナッチ数列自体には相場を動かす直接の意味はありませんが、多くの人がその数字を意識することで心理的な抵抗線や支持線として働く場合があるのです。
過半数を超える人が行動をすると残りの人も同じような行動をするという法則を「合理的群衆行動」と呼びますが、このことは、たとえオカルトであろうが(50%)以上の人が信じればそれが信実になることを示しています。
投資家は自分が見たいものを見る
チャートを観察していると、テクニカル分析には不思議な磁力があることが理解できます。実際のトレードにおいて「このチャートパターンなら絶対に価格は上昇するはずだ」といった将来の値動きが脳裏にくっきりと見えてくることがあります。
この鮮烈なイメージは、おそらく自分以外の多くのトレーダーにも見えているはずです。そして、現実にそのような結果となることが少なからずあるのです。
人間は自分が望むものが目の前に現れると強い印象を受け、それによって自分の考えに対する自信を深めていきます。テクニカル分析が語っているものは、実際はトレーダーの心理であり、トレーダーはテクニカル分析を通して自分が見たいものを見ているというわけです。
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