FXトレードにおいて、テクニカル分析は必要不可欠なツールです。書店のFX専門書コーナーをのぞくと、さまざまな種類のテクニカル分析の書物が並んでいます。しかし、テクニカル分析については根強い「無意味論」があります。チャート分析はあくまでも過去データの「後付け」に過ぎず、根拠に乏しいという意見です。
そこで今回は、テクニカル分析についての「無意味論」の根拠や、テクニカル分析との上手な付き合い方について考えていきたいと思います。
テクニカル分析のどこが問題なのか
テクニカル分析はオカルトか
たとえば天気予報士が「雨が3日続いたからそろそろ晴れるはずだ」と主張すれば、それはもう天気予報でもなんでもありません。それに近い感覚をテクニカル分析に抱いている人は少なくないかもしれません。
ランダムウォーク理論と「後付け」
「テクニカル分析は無意味である」という主張の根拠に「ランダムウォーク理論」があります。相場はどの時点であっても上昇と下降の可能性がつねに(50%)であり、過去のトレンドやデータから将来の値動きを予想することは不可能であるという理論です。
残念ながら、テクニカル分析には規則性を裏付ける論理的な根拠がありません。相場はあくまでもランダムに動くので、過去のチャートに似ているパターンがあるからといって、今回も同様の動きを見せる保証はどこにもありません。
テクニカル分析には論理性がない
ロジックの概念をひと言でいえば「なぜその結果になるのか論理的に説明できる」ということです。テクニカル分析は所詮「経験則」であり「ロジック」は存在しません。ロジックがなければ「論理性」に欠けます。テクニカル分析が経験則頼みであれば、ほとんど「占い」の類いを根拠にトレードしているのと同じことになってしまいます。
テクニカル分析に対するさらに具体的な疑問
テクニカル分析はなぜこんなに種類が多いのか
古今東西、チャートには様々な分析方法があります。有名なものだけでも「グランビルの法則」「エリオット波動」「ギャン理論」「平行移動線」「酒田五法」など、いろいろあります。
相反する現象に対してそれぞれが分析の正統性を主張しているため、どれが本当に正しいのかわかりません。分析法には「レンジ相場に強い」「トレンド相場に強い」といった特徴があるとされていますが、いろいろな方法があるということは、どの方法も正解ではないのかもしれません。
結局のところ勝率(50%)に収束するのではないか
相場には上がるか下がるかの2通りしかありません。ランダムウォーク理論に論理的な説得力がある以上、適当にエントリーを重ねていっても最終的に勝率は(50%)に収束していくと考えるのが自然なのではないでしょうか。
ちなみに「大きな勝ち」には制限はありませんが、「大きな負け」にはロスカットの制限があるので、勝率は拮抗していても収支の面でいえば最終的にマイナスになるのが自然な結論です。
それでもテクニカル分析には一定の信頼性がある
チャートは集団心理を現したもの
FXのチャートは投資家の集団心理をパターン化したものです。これは株式とは異なるFXの特徴といえるものです。
株価はそれぞれの企業の業績を大きく反映しますが、為替における通貨価値は株価ほどビビッドにその価値そのものを表すものではなく、相場に参入している投資家の思惑をより強く反映させたものだと思います。これは猫道場主の個人的な感覚ですが、おそらく多くのトレーダーからも賛同を得られるのではないでしょうか。
勝率は(50%)を上回る可能性が高い
したがって、チャートを見た多くのトレーダーの思惑がある程度一致するとすれば、テクニカル分析の予想通りに相場が動く可能性は少なくとも(50%)以上にはなるはずです。このこと自体が感覚的であり、数値化できるものではありませんが、相場において勝つ確率が少しでも高まるのであれば、ロジックがなくてもそれはそれでいいのです。
テクニカル分析は漆黒の闇の小さな灯りのようなものか
テクニカル分析は、「漆黒の闇の海を渡る船に見せるかすかな灯りだ」という感想を目にしたことがあります。
かすかな灯りを発見した船の船長は、その方向に向かいます。テクニカル分析が的中するとは、灯りを目指す船が多くなるという意味です。その一方で、灯りを発見できない船も一定数存在し、かれらは自分たちの直感や経験をもとに別の方向に進みます。また、灯りを目にしたヘッジファンドのような大型船が、ほかの船を出し抜くためにあえて灯りと違う航路を選ぶこともあるでしょう。「テクニカル分析には一定の信頼性がある」とは、そのような意味だと理解すればいいのかもしれません。
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