英ポンドはドル、ユーロ、日本円についで世界で4位の取引量を誇るメジャー通貨です。英ポンドはドルやユーロと比較して「値動きが荒っぽい」ことで知られ、投機的なトレーダーが好んで取引する通貨です。(ポンド/円)をメインでトレードしているトレーダーも多いと思いますが、華々しい値動きにより「殺人通貨」の異名をもち、「英ポンドでロスカットを喰らって退場した」「1日で●●円失った」といった悲惨な報告も多く目にします。
今回は英ポンドの特徴をチェックしていきましょう。初心者は英ポンドのトレードには充分注意してほしいと思います。
英ポンドの値動きを決める要素
EU離脱の影響
イギリスは2016年6月におこなわれた国民投票でブレグジット(EU離脱)を決定しました。イギリスのEU離脱は世界を驚かせましたが、離脱後のイギリスは政治的にも経済的にも大きな注目を集めていて、政治家の些細な発言が英ポンドに大きな影響を与えることもあります。
取引量が少ない英ポンド
英ポンドはドルやユーロと比べて圧倒的に取引量が少なく、なにかのきっかけで突然大きく値が動くという特徴があります。
(ドル/円)の取引量は非常に大きいので、特定の投資家が大きな売り注文を入れても、その分大きな買い注文が入って価格が均衡に向かうことが多いのですが、(英ポンド/円)で大きな売り注文が入ると、売りが売りをよんで加速的な暴落につながるケースがあります。英ポンドは一方的な値動きをしやすいのです。
ロンドン市場とニューヨーク市場の時間的な重なり
ロンドン市場は日本の夕方から深夜の時間帯にオープンしています。ロンドンに続いてニューヨーク市場がオープンしますが、かなり長い時間にわたって両市場の取引時間が重なります。ニューヨーク外国為替市場が開く時間帯以降は2つの大きなマーケットの影響を受けるため、英ポンドの相場は最高潮の複雑さを呈します。
(英ポンド/円)の特徴
ボラティリティ(価格変動率)が高い
もともと(英ポンド/円)は非常にボラティリティが高い通貨ペアでしたが、ブレグジット以降はさらにボラリティが高くなっています。大きな注文が入ったケースでは、パニック的に一方通行に動く特性があり、実際に1日で(200~300pips)動くこともあります。為替の変動幅は(ドル/円)の3倍ぐらいをイメージしておくと理解しやすいかもしれません。
(英ポンド/円)トレードをしているトレーダーの多くがスキャルピング狙いです。短時間の反発でも(10pips)程度の値動きがあるのは、ほかのメジャー通貨にはない特徴です。
ロスカットのリスクが大きい
値動きが大きいということは、ロスカットや追証のリスクも大きくなるということです。ロスカットラインの設定を誤ると、方向性があっている場合でも易々とロスカットに遭う可能性があります。(英ポンド/円)では証拠金に余裕をもって取引する必要があります。
スプレッドが広い
通貨取引量とも関係しているのですが、(英ポンド/円)は(ドル/円)に比べてスプレッド(手数料)が広く設定されています。(ドル/円)が(0.2銭)であるのに対して、(英ポンド/円)は(1.0銭)程度です。取引回数が増えれば増えるほど取引コストが大きくなるので、スキャルピングトレーダーにとっては悩ましいところです。
クロス円通貨ペアの予測は技術的に難しい
通貨ペアに日本円が入っているため、(英ポンド/円)や(ユーロ/円)といったクロス円ペアを選択するトレーダーが多いと思いますが、クロス円トレードは「ドルストレート」と比較して予測の難易度が高いのです。
(英ポンド/円)のレートはドルを介在して評価されます。
・円をドルに交換する ・ドルを英ポンドに交換する
このように(英ポンド/円)取引をするためには、建前的には上記のような2段階の交換がおこなわれます。正確にいえば、実際に両替が2回おこなわれるのではなく、(ドル/円)と(英ポンド/ドル)のレートを掛け合わせたものが(英ポンド/円)のレートになるのです。
したがって、(英ポンド/ドル)は下落傾向なのに(ドル/円)が上昇している場合は、結果的に(英ポンド/円)が上昇するといった複雑な事象も現われます。これがクロス円の予測が難しいといわれる理由です。
初心者は英ポンドに手を出すべきではない
英ポンドは扱い方が非常に難しい通貨です。値動きの予測が難しいうえに、とくに(英ポンド/円)のクロス円通貨ペアは(ドル/円)と(英ポンド/ドル)の値動きを掛け合わせたものなので、その分析はさらに難解を極めます。
大きな利益を狙えるため、魅力的ではありますが、とくに初心者は手を出してはいけない危険な通貨のひとつです。取引通貨については相性もあると思いますが、初心者は取引に慣れるという意味でも、スプレッドが狭く、参加者が多い(ドル/円)からトレードを始めましょう。
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