「MT4」は、ロシアの「MetaQuotes社」が開発した世界で最もメジャーな「チャート分析&自動売買ツール」です。
MT4はバージョンアップを繰り返し、現在はMT4の後継バージョン「MT5」が登場していますが、MT4で開発されたインジケーターやEAなどの資産をそのまま引き継ぐことができないうえ、機能的にはMT4とさほど変わらないため、ユーザーはあまり広がっていないようです。
日本の国内業者のなかでMT4が使える会社は10社前後しかありません。そのかわり、どのFX会社も自前の分析ツールをもっています。MT4を導入したほうがコストも安くなると思うのですが、国内のFX会社がわざわざ開発費をかけて自社のトレードシステムを維持している理由は何でしょうか。
国内FX会社が採用している「DD方式」とは
本題から少し脱線しますが、国内FX会社の「DD方式」について少し解説していきます。この点に触れないと、国内会社がMT4を採用しない理由が理解できないからです。
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「DD方式」とはなにか
DD方式というのは、顧客の注文をそのままインターバンク市場に発注するNDD方式(多くの海外口座が採用している方式)とは異なり、一旦FX会社が注文を保留する仕組みのことです。
DD方式では、FX会社にとって有利になる(つまり顧客が損をする)注文はそのままインターバンクに通し、不利になる(会社が損をする)注文はインターバンクに注文せずに、最終的にFX会社内で相殺するなどの処理がおこなわれます。この仕組みは上手くできています。かいつまんでいうと、顧客が損をすると会社が儲かる仕組みというわけです。
FX会社によってレートが異なる
DD方式は顧客とFX会社との相対取引なので、顧客はFX会社の「言い値」で売買をすることになります。為替レートはそれぞれのFX会社が裁量で決めるため、同じタイミングであってもA社では(ドル=100円)、B社は(99.99円)、C社は(100.02円)など、価格が異なることもあります。
DD方式の会社がスキャルピング制限をしている理由
余談になりますが、多くのDD方式の会社がスキャルピングを禁止しているのは裁定取引(アービトラージ)を予防するためです。
DD方式の会社間で発生する価格差を利用して顧客にアービトラージ取引をされてしまうと、FX会社の利益の期待値がマイナスになってしまうため、スキャルピングを制限しているわけです。
DD方式の会社はスプレッドが狭い
ここまで解説すると、DD方式というのは顧客にとって不利な面だけがクローズアップされてしまいますが、顧客にとって有利なポイントがあります。それはスプレッド(実質的な手数料)です。DD方式の会社はスプレッドを狭くできるのです。
DD方式ではFX会社はインターバンクへ顧客の注文をそのまま流さずに、顧客同士の注文を相殺することができます。Aさんが100円で買い注文を出している同じタイミングで、Bさんが100円で売り注文を出している場合、FX会社はわざわざインターバンクへその注文を流さずにAさんとBさんの注文を相殺することができます。このように、インターバンクへの注文にかかる手数料を省くことができるので、その分スプレッドを狭くすることが可能になるのです。
スプレッドに利益を依存しているNDD方式の海外業者は、DD方式の会社の低スプレッドには追随できません。
国内FX会社がMT4を提供しない理由
MT4を導入するための規制のハードル
2013年に国が投資に関するルールを定め、「投資判断のアドバイスをおこなうサービス」を営業するためには「投資助言代理業者」という資格を取得しなければならないことになりました。正式な司法判断はないようですが、MT4の自動売買ロジックである「EA」は投資判断のアドバイスに含まれるという見解が有力です。
なお、投資助言代理業者の資格を得るためには、以下のような条件が課せられています。
・500万円の営業保証金 ・投資判断者、内部監査官、コンプライアンス担当者の3名を役員として任命すること ・投資助言をおこなうためのオフィスの設置
MT4の導入に際してはこのような高いハードルが設けられているため、国内のFX会社はMT4を採用せず、取引ツールの自社開発をすすめていったと考えられています。
手数料値下げ競争の結果
一方で、日本国内のFX会社はスプレッド(手数料)の値下げ競争の真っ只中にあります。MT4を導入すると、取引量が増えるほど「Metaquotes社」に支払う手数料が大きくなり、この費用は顧客が負うことになります。
したがって、ほとんどの日本国内の会社は、MT4に手数料を払うよりも独自の取引ツールを開発してスプレッドを抑制したほうが、他社との差別化もでき、顧客を多く集めることができるという判断をしたのだと思います。
MT4を導入すべきかどうか
MT4が優秀であることは疑いないが
MT4は世界中のユーザーを対象にしたツールなので、使い勝手にクセはありますが優秀なツールであることは疑いありません。
ただし、国内FX会社の取引ツールもかなり進化しているし、なによりこれらの取引ツールは日本国内のユーザーを対象にした使い勝手になっていることを考えると、MT4とも見劣りしないように感じます。ただし、分析ツールはトレーダーの感性にも関わる問題なので、実際に試してみないとわからないというのは事実です。
独自にダウンロードすることが可能
MT4はインターネットから無料でダウンロードすることが可能です。手順に従えば簡単にインストールできますので、興味のあるユーザーは一度試してみてください。時間に余裕があれば、国内口座のツールと使い比べをしてみるといいでしょう。
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