「pips(ピップス)」は通貨ペアの値幅を表す共通単位です。外貨取引では、ドルやユーロをはじめ、さまざまな通貨を扱うので、比較指標を統一するために使われているのがpipsなのです。
今回は、pipsの効果的な活用法を解説します。pipsを苦手としている初心者トレーダーも、敬遠しないで、早い段階からその意味を理解するようにしてください。
pipsを理解しよう
初心者にとって理解が難しいpips
FX初心者にとってpipsは理解しづらく大変不評なのです。また、多くのトレーダーが扱う(ドル/円)の場合は、あえてpips表示しなくても「α円」「β銭」という表示が可能なので、pipsの意味を理解しないままトレードをしているトレーダーが少なくないというのが現実です。
しかし、pipsは単に値幅を表すだけでなく、効果的な使用法があります。
pipsが使われる便利な理由
冒頭で触れたように、pipsは外貨取引における共通の統一通貨単位です。FXではさまざまな通貨を取引しますが、それぞれ通貨の価値が異なるため、指標を統一しないと変動幅が理解しにくいのです。
・ドルが0.1ドル上昇する ・円が0.02円下落する ・ユーロが3ユーロ上昇する
このように、通貨ごとの変動幅を当該の貨幣単位で表してみても、評価が理解できません。ドルやユーロの価値がバラバラだからです。したがって、たとえば日本人のわれわれとすれば、それぞれの通貨の変動を円のレートに換算して以下のような表示にすれば理解が深まります。
・円が0.02円下落する ・ドルが0.1ドル上昇する⇒円に換算すれば(θ円上昇したことになる) ・ユーロが3ユーロ上昇する⇒円に換算すれば(σ円上昇したことになる)
しかし、外貨取引は円を介在したものだけではありません。たとえば(ドル/ユーロ)の取引ならどうでしょうか。それぞれ円に換算すれば価値の変化は計算できますが、その手順があまりにもムダです。そこで、どの通貨にも共通した単位(pips)を設けて比較しやすくしたわけなのです。
pipsは単なるFX取引における共通単位ではない
pipsは投資効率を可視化する
pipsはFX取引における共通単位というだけでなく、pipsを使うことによって投資効率(パフォーマンス)の比較が容易になります。
・(投資効率)=投資によって生まれた付加価値を評価するための指数
pipsを活用して投資効率を比較する
2人のFXトレーダーが次のように語っています。

Aさん:(ドル/円)で5,000円の利益が出ました!

Bさん:(ドル/円)で5,000円の利益が出ました!
どちらも(ドル/円)を取引して5,000円の利益を獲得したと語っています。具体的にどのようなトレードをおこなったのか詳しく聞いてみることにしました。

Aさん:(ドル/円)を10万円で1ロット(10,000通貨)買って、100.50円で売りました!

Bさん:(ドル/円)を1万円で5ロット(50,000通貨)買って、100.10円で売りました!
それぞれの利益を計算してみると以下のようになります。
・Aさん⇒(0.5円)×(10,000通貨)=(5,000円) ・Bさん⇒(0.1円)×(50,000通貨)=(5,000円)
どちらのトレーダーも5,000円の利益を得ていますが、「獲得pips」に注目すると、その中身はまったく別のものであることがわかります。
・Aさん⇒(100.50-100.00)円=(0.5)円=(50pips) ・Bさん⇒(100.10-100.00)円=(0.1)円=(10pips)
Aさんが(50pips)獲得している一方で、Bさんは(10pips)しか獲得していません。すなわち、AさんとBさんの投資効率に(5倍)の差があることがわかります。
投資効率の違いが示すもの
5,000円を獲得するために使った資金を比較してみましょう。比較を単純にするため、(ドル=100円)と仮定し、最大レバレッジ(25倍)でトレードしたとします。
Aさんのケース
・(必要証拠金)=(1,000,000円÷25)=(40,000円) ・(40,000円)の軍資金で(5,000円)を得たことになる
Bさんのケース
・(必要証拠金)=(5,000,000円÷25)=(200,000円) ・(200,000円)の軍資金で(5,000円)を得たことになる
AさんはBさんの(1/5)の資金で同じ利益(5,000円)を出しています。したがって、机上論にはなりますが、今回の取引でAさんがBさんと同じ資金(20万円)を投じていたとすれば、25,000円の利益を得ていたことになります。
投資効率を通じて見えてくるもの
大量ロットによって小さい値動きで売買を繰り返し、pipsを積み上げるという投資スタイルが絶対にないわけではありません。実際のトレード現場において「スキャルピング」で多用される手法です。市場の洞察力に自信があり、資金が潤沢にある投資家であれば成立するでしょう。
しかし、堅実なトレードスタイルを目指すのであれば、投資効率に注目すべきです。投資には波があり、つねに好成績を残せるわけではありません。トレードの好調不調の波を抑えるために、自分のトレードの投資効率(=損益pips)を把握しておくことは重要です。
「今日は5pips獲得した」「3pips損失が出た」というように、トレード収支の表示をpipsで統一することによって、トレードの調子の良し悪しを判断する癖をつけましょう。
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