スイスフランショックを経験したFXトレーダーであれば、かつて2チャンネルを賑わしたFXトレーダー「モーモーミルク界」の名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
30代主婦というプロフィールからは想像もつかない破天荒なトレードと、数百万円の損を抱えても平然と強気のトレードを続ける強靭な精神力。そしてなにより「モーモーミルク界」という愛くるしいネーミングによって、ネット界で一躍アイドルになった伝説のトレーダーです。
今回は伝説の主婦トレーダー「モーモーミルク界」のトレードの履歴を紹介しましょう。
「モーモーミルク界」を一躍有名にしたスイスフラン
聖杯といわれていた(ユーロ/スイスフラン)トレード
スイスの中央銀行(スイス国立銀行)は2011年以降、スイスフランの為替を安定させるため、対ユーロの下限を(1.2000フラン)に調整するべく、無制限介入をおこなってきました。
(ユーロ=1.2000フラン)に近づくとスイス中銀が介入することを知っている多くの投資家は、(ユーロ/スイスフラン)が下降してくるタイミングでナンピン買いをおこない、(1.197)あたりに一応損切り注文を置いて(1.2000)付近で跳ね返されて上昇したところで利確をしていました。
(1.2000)を越えないことがわかっているので、安心して買いすすめることができたわけです。この当時、(ユーロ/スイスフラン)は「聖杯」ともいわれていました。
スイスフランショックの阿鼻叫喚
ところが、スイス中銀は為替維持の方針を2015年1月15日に突然撤廃することを発表します。これ以上、対ユーロ介入のコストを負担できないという理由からでした。
スイス中銀の発表直後に、為替はあっさりと(1.2000スイスフラン)を下抜けし、たったの20分間で(0.82フラン)まで急降下しました。(ドル/円)に置き換えると、(ドル=100円)が(60円)になったのと同じ下落率です。
想像を絶する大暴落が現実に起こってしまいました。余りの値飛びにロスカット注文が通らず、口座残高がマイナスになるケースが続発したのです。
破綻が相次ぐ中、ひとり大勝ちする「モーモーミルク界」
このとき(スイスフラン/円)をひとり全力で買いすすめていたのが「モーモーミルク界」でした。彼女は年末に200万円入金し、スイスフランショックで2800万円まで資金を増やしたのが、波乱のトレードの幕開けです。
「モーモーミルク界」の狂気のトレードの変遷
2014年7月にFX界にデビューした「モーモーミルク界」は、トレード初期からすでに狂気の片鱗を見せていました。しかし、その常軌を逸したトレードが本格化したのは、やはり2015年1月15日以降のことでした。彼女のトレードはこのような変遷をたどっています。
2014年7月 | 400万円口座に入金してFXデビュー |
同年11月 | 資金をすべて失う |
同年11月末 | さらに500万円入金して2週間ですべて失う |
同年12月 | 200万円入金する |
2015年1月15日 | スイスフランショックで2800万円に資産を増やす |
同年1月16日 | 口座残高がマイナス100万円になり、追証するも資金は3500円に |
同年1月18日 | 70万円入金して14連勝。一時300万円になるが20万円に後退 |
同年1月26日 | 200万円入金してロスカットが続き、口座残高は5万円に |
2015年1月15日以降の怒涛のジェットコースタートレードが話題を呼び、「モーモーミルク界」のファンが大量に発生し、2チャンネルFX版のアイドルになりました。しかし、1月26日に口座から5万円を出金したところで一旦、波乱のトレードの記録が途絶えました。
「モーモーミルク界」の復活
しばらく姿を現していなかった「モーモーミルク界」が復活したのは2015年6月29日のことでした。この日はギリシャのデフォルト危機が本格化した、いわゆる「ギリシャショック」が勃発した日でした。
その後、彼女はしばらく以前と変わらない全力トレードを見せますが、8月24日の急落でポジションが強制決済され、その後の「モーモーミルク界」の消息はわかっていません。
「モーモーミルク界」のトレードの振り返り
「モーモーミルク界」の入金額の合計はおそらく1400万円を超えていたでしょう。「主婦」というプロフィールを信じるならば、おそらく彼女は夫に黙って貯金の(400万円)を入金して溶かしたことで焦り、両親や銀行、保険の解約などを頼って入金を繰り返していたのではないでしょうか。最後の残金5万円を出金したあたりにリアルな絶望を感じます。
「モーモーミルク界」から学ぶこと
2015年にFX界に旋風を起こした「モーモーミルク界」は、現在はどうしているのでしょうか。彼女のトレード成績が公開されていた「ヤフーファイナンススタジアム」は2017年7月にサービスを終了していて、その後の足取りをたどることはできません。しかし、彼女が再びネットに降臨して豪快なトレードを披露することはもうないでしょう。
「モーモーミルク界」が教えてくれるのは、反面教師としての学びです。FX投資でギャンブルトレードの魔力に憑りつかれると、確実に破綻するということです。常に全力フルレバレッジで取引をしていれば、家何連勝しても一度の負けで資金は枯渇してしまうのです。
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