初心者にとって難しいといわれる「スキャルピング」は、数十秒~数分の短時間に売買を完了させる取引方法です。1回に得られる為替差益は小さいので、頻回の取引をおこなう、もしくは大きなロット(取引量)でトレードするというアプローチが必要です。
先日、インターネットで「超高速スキャルピング」という技法が紹介されていました。今回はこの手法の可能性とリスクについて解説していきたいと思います。
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為替差益を得る2つの手法
FXトレードで為替差益を得る方法は2通りあります。
①ロットを抑えて、大きな利幅を獲得する…(デイトレードやスイングトレード) ②大量ロットのパワーで僅かなpipsで利益を上げる…(スキャルピング)
リスクヘッジにおいても①と②は考え方が異なります。
①におけるリスクヘッジは、ロット(ポジションサイズ)を抑えることです。ポジション保有期間が長いので、大きなロットで勝負するのは危険です。暴騰、暴落が発生したときに損失が拡大してしまうからです。
一方で、②におけるリスクヘッジは保有時間を限定することです。数pipsの含み損益が発生したところで即座に手仕舞いし、マーケットに資金を晒す時間を極端に短くします。
超高速スキャルピングとは
超高速スキャルピングの仕組み
超高速スキャルピングは、スキャルピングのなかでもとりわけ勝負が早い取引手法です。トレンド相場を捉えてわずかな為替の上下を狙い、おもに数十秒以内でトレードを完結します。
超高速スキャルピングでは、ロットを最大限に大きくして、1日に(1〜3pips程度)の利確をし、それを毎日継続します。少ない資金でロットを大きくするためには最大レバレッジが数百倍必要ですから、海外FX口座が使われることが多いのが特徴です。
超高速スキャルピングでは理論的にどれだけ勝てるのか
1pips程度の利幅でも、ロット数が多ければそれなりの利益になります。1万通貨では100円ですが、10万通貨であれば1,000円の利益、50万通貨なら5,000円になります。ハイレバレッジの海外FX業者であれば100万通貨でのスキャルピングも可能です。100万通貨で1pips取れれば、単純計算ですが1万円の利益になります。
超高速スキャルピングは戦い方がシンプルです。トレードに必要な要素はトレンドだけですから、短期的なトレンドを正確に読むことができれば勝ちやすい手法といえるかもしれません。
超高速スキャルピングの弱点
超高速スキャルピングはFXトレードの常道に反する
超高速スキャルピングには無視できない課題が2つあります。極めて高い勝率が求められる点と、適切な損切り幅の設定が難しい点です。
「極めて高い勝率」と「適切な損切り幅」は無関係ではなく、お互いに関連しています。超高速スキャルピングは、少ない利益を高勝率で積み重ねる一方で、一度の大負けによって大損失を喫するリスクを孕んでいるからです。いうならば「損大利小」であり、FXにおける勝ち方の基本である「利大損小」に反する考え方ともいえるでしょう。
リスクリワードバランスが極端に厳しい
リスクリワードバランスが極端に厳しい超高速スキャルピングは、含み損をどこまで許容するかが大きなポイントです。
極端な例ですが、(+1pips)のトレードで40連勝(+40pips)しても、一度の負けが(▲50pips)であればトータルでマイナスです。このように、超高速スキャルピングは含み損の数値と勝率のバランス、つまり「リスクリワードバランス」の設定が非常に厳しいのです。
ここで、ひとつのサンプルとして、利確と損切りラインを同じ数値(1pips)に設定し、勝率80%で収支がどうなるのか、確認してみましょう。
・(ドル/円)を1万通貨で200回トレード ・1pips上下に動いたポイントで決済 ・勝率80%
この条件下では、トレード収支は以下のようになります。
160回の勝ちトレードで160万円のプラス 40回の負けトレードで40万円のマイナス 200回トレードして全体収支は70万円のプラス
この結果を継続するのは簡単なことではなさそうです。「200回エントリーして、5回に1回しか負けられない」とすれば、トレーダーにとって大きなストレスとなり、為替の動きに一喜一憂して、毎日胃が痛くなるのではないでしょうか。
EA(自動売買)で結論は出ている
それなら「EA(自動売買)化すればいいじゃないか」と考える投資家もいるでしょう。実際に高速スキャルピング用のEAは、これまでも無数に販売されてきましたが、成功したEAは皆無といっていいでしょう。
「損大利小ロジック」の超高速スキャルピングは、EAで実装しても口座破綻リスクが常に存在し、長期運用には耐えられないことがわかっています。バックテストで優秀な成績をおさめたEAであっても、ほぼ全てのシステムがトレーダーの口座資金を枯らしています。
初心者は超高速スキャルピングはやめたほうがいい
超高速スキャルピングはFX界の主流戦法ではありません。その理由は「労多くして功少ない」からです。超高速スキャルピングは、努力して利益をコツコツ積み上げても、たった一度の負けで水の泡になってしまう可能性があるハイリスクなレード手法なのです。
よほど短期的なトレンドを読むことに自信がある熟練トレーダーでもない限り、超高速スキャルピングは安易に取り組むべき手法ではありません。また、インターネット上で高勝率を謳って販売されているEAについても充分注意しましょう。
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