新聞やテレビのニュースで、「悪い円安」という言葉をよく目にし、耳にするようになりました。なぜいま円安が起きているのでしょうか。そして、円安になると、日本で暮らすわれわれの生活にどんな影響があるのでしょうか。そして、この円安はいつまで続くのでしょうか。
今回は、最近よく聞かれる「悪い円安」論についてわかりやすく解説します。
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急速な円安の原因
2022年に入ってから3月初めまでは(ドル/円)相場は(115円)で推移していましたが、その後急激に円安が進行し、1か月半ほどで(130円)に到達しました。これは20年ぶりの安い水準です。円安の直接的な原因は、日本とアメリカの金利の差が広がったためです。
アメリカも日本同様、景気浮揚策として、ゼロ金利政策を採用していましたが、2022年になって国内の物価が高騰したため、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は2022年3月、インフレを抑制するため金利上げによる物価抑制政策に舵を切り、6月には(0.75%)の大幅利上げが発表されました。その一方で、日銀は国内の物価はまだ上がっていないとして、超低金利政策を変えていません。
「悪い円安」の懸念
円安のメリットとデメリット
原則からいえば、一方的に円安が良い悪いというものではなく、功罪両面があります。
円安のメリット
円安のメリットのひとつは、輸出企業の海外における価格競争力が上がることです。そのほか、海外の資産に投資をしていた場合に、受け取ることができる利子や配当が円換算することで増え、海外からの観光客が増える可能性が高まることも挙げられます。
円安のデメリット
円安の最大のデメリットは、海外から輸入するモノの値段が上昇することです。日本は石油や食料など多くの物資を輸入に頼っているので、さまざまな商品の値段が上がっていきます。
日本の産業構造の変化が生んだ「悪い円安」
メリットとデメリット双方あるなかで、なぜ今回は「悪い円安」という表現が使われているのでしょうか。それは、メディアが大げさに煽っている面もあるとは思いますが、現在の日本経済を取り巻く環境に、円安のメリットを享受できない原因があるからです。
2000年以降、長く続いた円高局面によって、日本企業が生産拠点を海外に移転した結果、企業は円安メリットを享受できなくなりました。さらに、現在のコロナ禍によって海外からの観光客の消費がなくなったことも、円安にメリットを感じられない理由です。ウクライナ紛争の長期化の影響も、経済の沈滞化に暗い影を落としています。
「悪い円安」といわれるのは、これらの事象を総合した結果というわけです。
円安を懸念する閣僚や日銀総裁の発言
政府閣僚や日銀総裁は、円安が速いペースですすんでいることに懸念を表して、それぞれこのように語っています。

企業が原材料高を価格転嫁できず、国民の賃金も上がらない状況下での円安は「悪い円安」といえるのではないか(鈴木俊一財務相)

大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる(黒田東彦日銀総裁)
もっとも、日銀の黒田総裁は、4月末の金融政策決定会合で急激な円安に懸念を表しながらも、長期金利上昇を抑え込む姿勢を改めて鮮明にしています。その結果、外為市場では円安が一気に加速しましたが、黒田総裁は「日本経済全体にとって円安はプラス」との考えを崩さず、大規模緩和を続ける構えを保持しています。
円安はいつまで続くのか
円安はしばらく続く
2022年7月以降も中期的な円安トレンドが継続する可能性が高いというのが大方の見解です。近い将来に円買い材料が現れそうにないからです。少なくとも、黒田総裁の任期中に日銀が緩和縮小へと転じる可能性は低く、実需面での円安材料となっている日本の貿易赤字も当面解消の見込みはありません。
ますますドル有利に向かう(ドル/円)相場
円安基調が終息するためには、アメリカ経済のインフレが抑制に向かい、利上げがストップするといった、アメリカの経済政策の転換が必要です。しかし、足元の情勢をみても、そのような事態は当面は見込みづらく、このまま中期的に円安ドル高が続くと予測されています。
さらに、ウクライナ紛争の長期化が加わることによって(ドル=150円)を超える円安ドル高にすすむという分析も有力です。少なくとも中期の(ドル/円)相場については、ドル買いがプラスに働きそうです。
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