ウクライナ情勢に学ぶ「有事の円買い」が通用しない決定的な理由

FXの基礎編

「リスクオフの円買い」「有事の円買い」という相場格言があります。戦争や大災害などの有事の際には円が買われ、円高になるという意味です。これまで円は「安全資産」とされ、金融危機や国際テロなどの有事のたびに買われ、円高ドル安が進むのが通例でした。ところがロシアのウクライナ侵攻では円安が進行しています。これはどういうことなのでしょうか。

今回は「有事の円買い」という相場の常識が崩壊しつつある原因を解説していきます。


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有事の円買いとは

リスクオフ」とは、投資資産をリスクが高い資産からリスクが低い資産に移す動きを指します。戦争や大災害、金融不安などによって相場の先行きが不透明な状況下では、投資家はリスクを極力回避しようとして、戦争や災害当該国の株式や通貨を処分して「安全資産」と呼ばれる円を買う動きが活発になります。

過去の事例から

2001年 アメリカ同時多発テロ (ドル/円)相場は円高方向に4円近く高騰
2008年 リーマンショック (ドル/円)相場は9~12月に20円以上高騰
2011年 東日本大震災 (ドル/円)相場は3~10月に7円以上高騰
2020年 コロナパンデミック (ドル/円)相場は3~12月に6円以上高騰

東日本大震災のケースでは、日本がリスク当事国であるにも関わらず円高となりましたが、これは被災者に対する保険金の支払いに起因するとされています。生損保各社が契約者に保険金を支払うためには多額の現金を円で用意しなければならないのですが、契約者から受け取った保険料の一部を海外の株式や債券で運用しているため、これらを売却して円に換えるとの見方が強まったのです。

ウクライナ情勢と円相場

ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日以降、(ドル/円)相場は円安方向にレートが動き、市場関係者を驚かせました。「有事の円買い」の定説が崩れたからです。

具体的には、(ドル/円)は115円前後で推移している状況が続いたあと、3月10日に一時116円台に乗せると、117円から、118円、119円と、するすると円安方向に動いていきました。そしてついに6月には130円台に乗せ、2015年8月12日以来の水準となったのです。

円の価値が揺らいでいる

ウクライナ危機をきっかけに潮目が変わった

為替レートは世界中の市場関係者のさまざまな思惑によって動くため、その背景を正確に説明することは簡単ではないのですが、ウクライナ問題における円安の原因は、「安全資産」としての円の信頼性が揺らいでいることが原因だと分析する市場関係者が増えています。

日本の貿易収支の悪化

円が安全資産とされてきた理由は、日本の貿易収支が長らく黒字を維持していたことにあります。日本の貿易収支が黒字であれば、通貨の需給の関係上、円の価値が低くなりにくく、その結果、円の安全資産としての信用度も高くなるのです。

ところが近年では、日本の貿易収支が赤字になる月もあるなど、安全資産としての円の信頼性に陰りがみえてきました。これまで、日本の貿易黒字の牽引役であった製造業が勢いをなくしつつあることが貿易収支悪化の一因です。

エネルギー問題

日本国内のエネルギー問題も深刻化しています。東日本大震災の発生後、日本国内の原子力発電所の運用はストップしました。発電量の減少分は火力発電でまかなうこととなり、日本は石油や石炭など化石燃料の輸入を増やさざるを得ませんでした。

そして、ロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、原油や天然ガスの先物価格が高騰したことが決定打となり、世界の金融市場において日本の貿易収支がさらに悪化するとの懸念が高まったのです。

日米の金融政策

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年3月16日に、2020年から続けてきた低金利金利政策を終了し、段階的な利上げを決定しました。アメリカ国内の景気回復によって雇用状況が改善する一方で、消費者物価の上昇率が40年ぶりの高水準となっていることから、インフレ抑制のため、景気下支えのための金融緩和策から金融引き締めへと政策転換することになったのです。

その一方で、日本は「ゼロ金利政策」を維持するとしています。この両者の違いが円安を加速させる直接的な原因となっています。

今後の(ドル/円)相場の見方

資源のない日本はエネルギーや農産品を輸入することを避けられず、資源の輸入コストが上昇すれば赤字は拡大します。今回のウクライナ危機では、石油資源や鉱物資源のほか、穀物などの輸入も滞っています。ウクライナは一大農業国なのです。

資源を輸入するためにはドルが必要です。現状の円安は日本の生産コストを拡大させ、日本からの輸出コストや効率を阻害する原因となります。したがって、このまま資源高が続く限り、円安基調は恒常的に続き、好転する見込みは薄いといわざるを得ません。もし(ドル/円)相場の構造的な変化が起こるとすれば、日銀の金利見直しの議論が始まるかどうかがポイントになります。今後の政府や日銀の動向を注視しましょう。


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