電気自動車企業「テスラ社」や宇宙開発企業「スペースX」を率いる世界一の富豪のイーロン・マスク氏は仮想通貨に大きな興味をもっていることで知られています。しかし、最近では、マスク氏の仮想通貨市場における影響力に変化が生まれているという情報が聞こえてくるようになりました。マスク氏の周辺でなにが起こっているのでしょうか。
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仮想通貨の強み
まずは、マスク氏がなぜ仮想通貨に惹かれるのか。考えられる2つの特徴を紹介しましょう。
決済が一瞬で完結すること
仮想通貨が登場するまで、キャッシュレスの代表格といえばクレジットカードでした。しかし、クレジットカードには限界があります。それは、決済がその場で完了しないということです。例題として、カードの利用者がレストランで食事するケースを考えてみましょう。
①レストランの利用者がカードで支払いをする ②レストランからカード会社に情報が伝えられる ③カード会社から金融機関に使用情報が伝わる ④金融会社からカード会社に送金される ⑤カード会社からレストランに送金される
このような煩雑なプロセスが必要です。店舗側では、利用者がレストランでカード支払いをしたあと、入金されるまで数週間かかることもあるでしょう。しかし、ビットコインであれば数秒から数分で決済が可能です。ユーザー側としても、金融機関を介さずに自分で管理できるので利便性も高いと感じられます。
匿名性があること
仮想通貨は、実名でなく匿名で取引をおこなうことも可能です。これは金融犯罪の助長と表裏一体でもあるのですが、仮想通貨の保有者はお金の主権をもっているといえます。
仮想通貨は海外送金のシーンでも便利です。銀行経由で海外送金しようとすれば、煩しい手続きや書類が必要であるうえ、手数料もかかります。しかし、仮想通貨であれば、特定の金融機関に依存せずに一瞬でやりとりが成立します。
金融機関の場合は、犯罪やマネーロンダリングであると判断すれば、送金を阻止することが認められますが、ビットコインやブロックチェーンにおいては、管理者がいないので、そのような制限を受けることもありません。
イーロン・マスク氏が描く仮想通貨の世界
マスク氏のバックグラウンドとの親和性
マスク氏は大手オンライン決済サービス「ペイパル」出身であり、フィンテック(金融サービスの革新的技術)のバックグラウンドがあります。それに加えて、元来、政府や規制といった固定観念には否定的な信条の持ち主です。マスク氏は、これらの既成概念を打破する可能性を秘めているブロックチェーンや仮想通貨の理念に深く共鳴し、肩入れしているのです。
中央集権型からの脱却
既成概念を嫌うマスク氏が注目する仮想通貨の一番のキーワードは、「非中央集権型」です。政府や中央銀行、企業などが介在する「中央集権型」金融システムには、厳格な法律や煩雑な手続きや手数料が存在していました。しかし、ブロックチェーンが世界金融の主流になれば、中間的な障壁や規制が一切必要なくなります。これが、マスク氏が目指すあたらしい経済システムの形です。
テスラ社のビットコイン購入の衝撃
2021年1月、テスラ社が15億ドル相当のビットコインを購入したという発表は、当時大ニュースになり、発表後の1か月でビットコイン価格が60%以上も値上がりする原動力となりました。その後も、マスク氏はたびたびビットコインや仮想通貨について発信し、そのたびにビットコイン相場は大きく値上がりしています。市場参加者の多くがマスク氏の言動に注目しはじめたのです。
マスク氏の勢いに陰り
しかし、2021年以降、マスク氏のさまざまな不手際により、世間からの視点が変化してきました。スペースXの社員へのセクハラ疑惑や、隠し子問題など、マスク氏は次々にスキャンダルに見舞われたのです。マスク氏は仮想通貨「ドージコイン」についても度々ツイートしてきましたが、2022年になってドージコインが暴落した際には、損害を被った投資家によるマスク氏を相手取った訴訟にまで発展しています。
また、ツイッター買収計画の断念は、マスク氏の評判を大いに損なうきっかけとなりそうです。これらの事件の数々は、仮想通貨市場を席巻したマスク氏の神がかり的な勢いに、急ブレーキをかける結果となりました。
アメリカの経済誌には、このようなコメントが掲載されました。

マスク氏は仮想通貨について助言を求めるべき人ではない。単に特別声が大きく衝動的で、信頼できないファンに過ぎない。
限定的なテスラ社のビットコイン売却のインパクト
2022年7月のテスラ社の決算発表において、同社はバランスシート上で保有していたビットコインの75%を売却したことを明らかにしました。しかし、このニュースはビットコイン価格に大きな影響を与えませんでした。むしろ、テスラによる売却翌日のビットコイン価格は、前日比で少し値上がりしています。
短期的な判断は時期尚早ですが、先の評論家のコメントのように、仮想通貨市場におけるイーロン・マスク氏の影響力は小さくなっているのかもしれません。
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