アメリカの金融政策の影響によって、外為市場は全面的なドル高の様相を呈しています。こうしたなかで隣国の通貨ウォンは急降下しています。2022年9月現在、(1ドル=1390ウォン)の大台をあっけなく突破し、1400ウォンの大台割れも視界に入ってきました。
今回は、空前のウォン安が韓国に及ぼす効果と、為替市場への影響について考えていきましょう。
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金利上げによるドル高進行
ドル全面高の様相
国内のインフレ対策として始められたFBRの金利上げにともなうドル高は世界規模のもので、今回のテーマである韓国ウォンに留まらず、円やユーロ、スイスフラン、英ポンド、カナダドル、豪ドル、その他あらゆる通貨の下落をリードしています。
(ドル/円)相場は(140円台)半ばから(145円台)をうかがう勢いがあり、(150円)に到達するかどうかにも注目が集まっています。
日本経済への影響は限定的
もっとも、円安による日本経済への影響は限定的です。日用品やガソリンなど、一部でインフレ傾向が見えますが、ヨーロッパの状況と比較しても、まだ深刻なインフレ状況には至っていません。
物価上昇によって市民生活には若干の影響はあるものの、輸出企業は円安によって業績好調です。日本は莫大な海外資産を保有し、ハードカレンシーである円はドルとの無制限のスワップを締結していることもあり、日本が通貨危機に陥る可能性はほとんど考えられません。
影響が大きい中産国や発展途上国
しかし、外国からドル建てで借金をして生産活動をおこなっている国は事情が異なります。自国通貨の価値が急落すれば、生産コストが上昇するほか、債務の借り換えができなくなる事態にも直面しかねません。中産国や発展途上国は非常に危ないのです。
韓国経済の今
空前のウォン安に突入
韓国銀行のデータベースによれば、(1ドル=1390ウォン)の大台を突破したのは、2009年4月以来のことで、1997年の「アジア通貨危機」や2008年の「金融危機」を除けば、これほどのウォン安は過去に例がありません。
外貨準備高の状況
ソフトカレンシーの価値を支えるのは、通貨発行国の外貨準備高です。韓国政府は、自国の外貨準備は潤沢にあると説明しています。それが事実であれば、韓国が直ちに通貨危機に陥ることはないかもしれませんが、諸外国の金融機関はかなり怪しいとにらんでいます。
また、韓国は外貨準備を積極運用していることでも知られています。それも、債券ではなく株式などボラティリティが非常に高い「オルタナティブ資産」に、かなり投機的な運用をしているといわれています。したがって、通貨危機が発生した際に、すぐに投入できる「真水の資金」がどれぐらいあるのか、不透明なのです。
通貨介入の実態
これまで韓国銀行はウォン相場を一定に維持するために通貨介入をおこなってきました。手持ちのドル売ってウォンを買い、(ドル=1200ウォン)を死守ラインとしてきましたが、2022年になると、あっけなく突破されてしまいました。
今後は(1400)ラインの攻防が繰り広げられるでしょう。この攻防戦により、韓国銀行がさらに多額の外貨準備を溶かすであろうことにも注目しなければなりません。
不動産相場に暗雲
一方で、韓国では不動産関連融資の焦げ付きが始まる気配が見られ、文政権時代に1.5倍に値上がりしたマンション相場もマイナスに転じました。まさに、日本のバブル崩壊を想起させる状況にあります。一方で、多重債務も社会問題化し始めています。
韓国ではこれ以上の利上げは難しい
このままアメリカの政策金利が上昇を続ければ、ウォンの値下がりや外国資本の流出にますます拍車がかかります。最悪の事態は「通貨危機」です。これを止めるためには、利上げで対抗するしか方法がありませんが、利上げをすれば、不動産価格の暴落や、多重債務者の家計の破綻が相次ぐ可能性も考えられます。
通貨危機もしくは金融危機が起こる可能性
いずれも起こりうる
国内家計債務者の破綻を通じて金融機関が資本不足に陥れば「金融危機」が発生し、利上げが不十分でウォン安ドル高が無制限に続き、韓国から外貨が流出する事態になれば「通貨危機」になる可能性があります。
現在の韓国は、いずれも起こりうる危険な状態にあるといえます。
アメリカ、そして日本はどうする
1997年のアジア通貨危機では、日本や米国が韓国を積極的に支援しました。また、2008年の金融危機の際にも、日韓通貨スワップの増額、米韓時限為替スワップなどの措置がとられました。
しかし、現在の韓国は米韓為替スワップ、日韓通貨スワップのいずれも期待できない状況にあります。韓国は中国と4000億元の通貨スワップ協定を締結していますが、米ドルとの自由交換に制約がある人民元を入手したところで、通貨危機を防ぐのに役立つかどうかは微妙です。
FXトレードへの影響は
かりに韓国経済が危機に陥ったとしても、為替市場への影響は限定的です。元来、韓国ウォンはFXの投資先として選ばれることはほとんどないので、日本のトレーダーが直接影響を受けることもないでしょう。一方で、新興国経済の停滞は相対的にドルの評価を上げるはずです。
注目すべきポイントはアメリカの経済状況です。アメリカ国内のインフレが抑制されたと判断されれば、金利上げにはストップがかかるはずです。そうなれば、全面ドル高の状況にも変化が生まれると思います。
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