数あるテクニカル分析のなかでも「ボリンジャーバンド」はプロ好みの分析法として知られています。その活用法は多岐にわたり、初心者にとっては敷居が高いと感じることもあります。しかし、ボリンジャーバンドには初心者でも充分理解できる基礎的な分析法や考え方が備わっています。「難解だから」と毛嫌いしているとすれば、いかにもモッタイナイ話です。
そこで今回は、ボリンジャーバンドの考え方をわかりやすく紹介し、基礎的な活用法について解説したいと思います。
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ボリンジャーバンドの発想
「ボリンジャーバンド」を考案したジョン・ボリンジャー氏は、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の融合を目指して有効な分析方法を長年探求していましたが、結局、有効な手段を見つけることができませんでした。そのかわり、独自に「ボリンジャーバンド」というテクニカル指標を考案するに至りました。
ボリンジャーバンドはどんな指標か
テクニカルとファンダメンタルズ分析の融合
たとえば、「平行移動線」を使って分析をおこなう場合、為替が移動線を「抜ける」または「割る」状況でエントリーをするアプローチが一般的です。しかし、エントリーしてから、その後の価格がどの範囲で納まるかについては、平行移動線で判断することはできません。
そこで、ボリンジャーバンドでは、平行移動線に「標準偏差」という要素を加えて、相場変動幅を確率論的に判断するアプローチを試みています。
標準偏差とはなにか
ボリンジャーバンドで用いられる「標準偏差(シグマ=σまたはΣ)」はデータのばらつき度合いを数値化したもので、身近なところでは「偏差値」を算出するときに使われる指標です。
たとえば平均点が50点のテストで70点を取れば、まあまあ優秀だと感じられますが、トップが100点、最下位0点までいる中での70点と、トップが75点、最下位が25点での70点では、同じ70点でも価値が違います。それを数値化して説明できるのが偏差値や標準偏差という考え方です。
(標準偏差=バンド幅)から見えてくるもの
ボリンジャーバンドは、過去の値動きの大小を+2σ(バンド上限)から-2σ(バンド下限)のバンド幅で示すことにより、ボラティリティの大きさを判定することが可能です。バンド幅が大きければボラティリティが大きい「トレンド相場」を、バンド幅が狭ければボラティリティが小さい「レンジ相場」を表します。
ボリンジャーバンドの考え方の基礎
為替はほとんど(±2σ)の範囲に収まる
ボリンジャーバンドの売買シグナルはいたってシンプルです。
・(+2σ)を越えたら買われすぎ⇒売りサイン ・(-2σ)を越えたら売られすぎ⇒買いサイン
その根拠は、統計学上のデータ分布から導き出される確率によります。
・(+1σから-1σの間に価格が存在する確率)⇒68.3% ・(+2σから-2σの間に価格が存在する確率)⇒95.5% ・(+2σを超える、もしくは-2σを割り込む確率)⇒4.5%
上記のように、為替相場のほとんどは(±2σ)のバンドの範囲内で上下に動くレンジ相場を形成しています。バンドを逸脱する場面というのは、つまりトレンド相場への移行を表しますが、トレンド相場はわずかに(4.5%)しかありません。バンドを逸脱した後、相場はいずれバンド内に戻ることから、「+2σを超えたら売り、-2σを超えたら買い」という仮説が導き出されるのです。
ただし、これが仮説である以上、万能ではなく、データのばらつきが真ん中が高くて左右に少しずつ減っている「正規分布」の時に、この統計的結論が成立するとされています。
ボリンジャーバンドの期間設定
ボリンジャーバンドは過去データの分析をおこなうわけですが、その期間設定については「平行移動線」の期間を充当します。「10日平行移動線」なら期間は「10」、「25日平行移動線」であれば期間は「25」となります。
ボリンジャーバンドの初期設定の期間は「20」が一般的です。理論的な裏付けを見つけることはできませんが、考案者であるジョン・ボリンジャー氏の著書のなかに「20日間の期間と2標準偏差のバンドを利用している」との記述があることから、多くのボリンジャーバンド愛用者もそれに倣い、期間設定を「20」にしています。
ボリンジャーバンドの最新活用法とその評価
ボリンジャーバンドの基本は(±2σ)の指標を用いたものですが、さらに進化して、(±1σ)と(±2σ)の指標を組合せて売買シグナルとする戦術があります。
5本ラインを用いる
上図を見てください。ボリンジャー氏は、中央の平行移動線と(±2σ)のバンド幅を基本としましたが、現在はこれに(±1σ)を加えた5本のラインの組み合わせが多く用いられています。(±1σ)を表示することによって、次のような売買戦略をとることができます。
・平行移動線よりも下の水準から(+1σ)に到達したら、順張りで買う ・平行移動線よりも上の水準から(-1σ)に到達したら、順張りで売る
価格が(±1σ)に到達した時点で、その方向へのトレンドが発生したものとみなし、順張りでトレードし、(±2σ)で利益を確定します。しかし、エントリー後に利確目標の(±2σ)まで到達せず、反転してしまう場合があります。その場合は、平行移動線に戻ったところで損切りします。
ジョン・ボリンジャーはこのように語っている
ボリンジャー氏は、バンド幅はあくまでも平行移動線と(±2σ)の合計3本線だけを基本とし、一般化している(±1σ)を使った5本線の分析方法は統計的に無意味だとしています。
(±1σ)以内に価格が収まる確率は(68.3%)であるということは、トレンド転換しない確率は(32.7%)もあるわけです。投資家としてはエントリー機会をできるだけ増やしたい思いがあります。(±1σ)からの離脱時点におけるトレンド転換の可能性がやや精度的に劣るとしても、経験則において有効と判断し、愛用する投資家も多いのでしょう。
3本線か5本線か、いずれを信じるのかについては、それを利用する投資家次第です。ただし、初心者としては、まずは(±2σ)の原則を覚えておくといいのではないでしょうか。
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