金(GOLD)の相場は空前の上昇をみせています。コロナパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻など、揺れ動く世界情勢にあって、ますます現物投資である金に注目が集まり、金相場はここ40年ほどで最高値を記録しています。そこで今回は、FXトレーダーが学んでおきたい金投資の基本と今後の展開について解説したいと思います。
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金の価格はどのように決まるのか
おそらく、ほとんどの人は金の値段がどのように決まっていくのか知らないと思いますが、金相場の仕組みを学ぶことによって、為替相場との密接な関わりが見えてきます。
金の価格は「ドル建て」になっている
金市場は、ニューヨークやロンドンのほか世界中に存在しますが、「ニューヨーク金先物相場(NY金相場)」の相場が金価格の世界標準ということになっています。NY金相場では(1トロイオンス=31.1035グラム)あたりの価格をドルで表示します。つまり、金相場は「ドル建て」になっているのです。
日本の円相場はどうなっているのか
ところが、日本国内の販売所の店頭で表示されているのは「円建て」の1グラムあたりの価格になっています。要するに、円建ての金の小売価格というのは、ドル建てを円換算したものとなっています。ドル建て価格に、その日の(ドル/円)為替を掛けて、トロイオンスからグラムへ換算します。さらに、そこに手数料やマージンを乗せたものが、1グラムの小売価格として店頭表示されています。
ドル建て価格が2000ドル、(ドル/円)が130円の場合、金1グラムあたりの国内小売価格はこのようになります。
(2000ドル)×(130円)÷(31.1035グラム)≒8087円(金のグラム単価)
※実際にはこの価格に販売所のマージンが加わります。
(ドル/円)相場と金価格の関係性
ドルと金の圧倒的な信頼性
金とドルはどちらも世界的な通用力があり、かつてはドルが強い時には金が売られ、ドルが弱い時は金が買われるという相関関係があるとされていました。
アメリカの景気が良くなるとドルの価格が高くなりますが、テロや戦争、エネルギー供給の不安定化などにより世界経済が不安定になると、景気が低迷してドルが下落します。そのような事態になると、各国の銀行が経済浮揚対策として「低金利政策」を打ち出すため、利息がつかないという金のデメリットが薄まると同時に、特定の国の状況に依存しない金は安全資産として買われ、値上がりするのです。
(ドル/円)と金価格の関係が変化している
円建ての金価格のほうは(ドル/円)相場に連動します。日本国内の金の価格は「ドル安円高で下落」し、「ドル高円安で高騰」します。日本国内で金を買う場合、「円高」の時がお買い得となるわけです。
しかし、(ドル/円)と金相場の相関関係は完全なものではなく、現実的にはもう少し複雑な動きを呈します。世界情勢や経済の先行きをどう読むかによって市場の方向性が異なった動きを見せ、金もドルも両方値上がりしたり、両方値下がりする場合もあります。とくに昨今では、ドルと金相場の相関関係は変化を見せる局面が増えています。コロナパンデミック、ウクライナ情勢など、大きなトピックが重なり、これまでの金相場の常識が変わりつつあります。
「ドル高金高」時代の到来
世界的な金融緩和によって、世の中にマネーがあふれています。株が上がると機関投資家の資金に余裕ができ、投資家は新たな投資先を求めて資金が金に向かうため、「ドル高金高」という特異な状況が生まれています。
基軸通貨としてのドルに不信感があったとしてもドルの代わりになる通貨はないので、各国政府は万一のために莫大な量の金を保有することでリスクヘッジを図るわけです。
金相場はドルとの関係性のほか、世界情勢によっても変動します。世界中が好景気になると年利が高い債券や株式が売れ、金の値段が低下します。世界情勢が不安定になれば、現物指向の高まりから金を購入する人が増え、金の価格は高騰します。
これからの金投資
リスクヘッジになるか
これまで金は「株式投資のリスクヘッジ」として買われてきました。リスクヘッジは金と株式やドルが逆相関の関係にあってこそ成立するものですが、現代はその法則が通用しにくくなっています。「ドル高金高」「ドル安金安」「金高ドル高」の新常識においては、金の保有は為替取引や株式取引のリスクヘッジにはならないと考えるべきかもしれません。
イラク戦争の際には、戦争が勃発する前から値上がり含みで金の保有を増やしていた機関投資家は、戦争が始まるとすぐに金を売り逃げしています。今回のウクライナ戦争では、まだ出口は見えませんが、やはり戦争終結時には金売りが殺到する可能性はあるかもしれません。
金に弱点はあるか
デメリットの少ない金投資ですが、唯一といってもいい弱点は、金利などのインカムを生まないことです。したがって、実質金利が上がれば金投資のデメリットが膨らみます。今後アメリカの利上げが続くことによって、さらに金投資の弱点がクローズアップされるような状況になれば、長く続いた金相場の上昇にもようやくストップがかかるかもしれません。
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