2022年11月11日、仮想通貨交換大手の「FTXホールディング」が経営破綻しました。債権者は10万人以上で、負債総額は数兆円規模にのぼる可能性があります。仮想通貨市場における過去最大規模の経営破綻となり、世界各国で影響が懸念されています。
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FTXとはどんな会社か
FTXホールディングは2019年創業で、利用者は100万人以上、1日の取引量は数十億ドルと世界有数の規模を誇っていました。創業者はバンクマン・フリード氏です。フリード氏は1992年生まれの30歳(2022年11月現在)、マサチューセッツ工科大学を卒業し、卒業後すぐに複数の仮想通貨取引会社を設立し、一気に時代の寵児になりました。
FTXは、大谷翔平選手がアンバサダーとなり、ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドや、女子テニスの大坂なおみ選手ら著名スポーツ選手が出資していたことでも知られています。
FTX破綻の経緯
仮想通貨の交換所を運営するFTXトレーディングは11月11日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請して経営破綻したことを発表しました。傘下企業の信用不安で資金繰りが悪化し、約130社のグループ会社も11条を申し立てました。
FTXは各国で引き出しを停止し、日本法人「FTXジャパン」も関東財務局から業務停止命令と業務改善命令を受けています。
資金の水増しが発覚
破綻のきっかけは、同社の関連企業「アメラダ・リサーチ」の資産水増しのスキャンダルがリークされたことでした。アメラダ・リサーチは数千種類のデジタル商品を扱い、総資産は140億ドルとされていました。しかし、その内訳は、資産の大半が60億ドル相当のFTXと仮想通貨資産で構成されていて、株式が20億ドル、保有する現金は1億3400万ドルにすぎないことが明らかになりました。
信用供与枠が自社トークンという水増しの状況で、キャッシュは1%にも満たないことが判明したことから、一挙に投資家の資金引き上げが始まりました。
バイナンスによる救済が不発に終わる
11月8日になって、業界関係者をあっと驚かせる情報が流れました。FTXの最大のライバル「バイナンス・ホールディングス」がFTX買収の基本合意に到達したと報じられたのです。
ところが、翌9日にはバイナンスは手のひらを返し、急転直下、FTXの事業買収を撤回する旨の発表をしました。

資産を精査した結果、われわれの手に負えないことが判明した (バイナンス・ホールディングスCEO 趙長鵬)
バイナンスの趙長鵬CEOが同社が保有するFTXのネイティブ・トークン「FTT」の全売却を発表すると、雪崩のようにFTTが売り込まれ、25ドル台の値をつけていたFTTは一気に2ドル台に暴落しました。
FTX破綻にまつわる黒い噂
ロイター通信によると、辞任したフリードCEOは、FTXから自身が所有する投資会社に100憶ドルの顧客資金を密かに移し、そのうち10億ドルから20億ドルの資金の行方がわからなくなっているという報道があります。今後、破綻の詳細が明らかになるなかで、疑惑が明かされることがあるかもしれません。
破綻の規模
業界最大規模の破綻
米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、FTXの債権者は10万人以上、負債は数兆円規模に上るとし、業界で過去最大級の経営破綻になるとみられています。フリードCEOは辞任を表明し、ツイッターへの投稿で「本当に申し訳ない」と利用者に謝罪しました。
1年前の4分の1になったビットコイン
FTXの破綻を受け、ビットコインはFTXの破綻公表後の十数分で5%下落し、1年前の最高値のほぼ4分の1になりました。時価総額2位の仮想通貨「イーサリアム」も、同期間で5%安となっています。そして、世界の仮想通貨市場から、わずか2日のうちに約32兆円もの資金が消失してしまいました。
今後の仮想通貨市場への影響
仮想通貨の仕組みの限界が露呈する
価値の裏付けがない仮想通貨資産は、期待で価値が膨らみやすい反面、逆回転すると脆弱な面を一気に露呈します。今回のFTXの事案は古典的な「取りつけ騒ぎ」ですが、仮想通貨市場が抱える本質的な脆弱性が顔を現した結果であると考えるべきでしょう。
信用の脆弱な仮想通貨を複雑に組み合わせてリスクをヘッジしたつもりでも、その内情はリーマン破綻時の「サブプライム・ローン」商品と似たようなものであり、その場しのぎ以上の対策にはならないことがわかります。
リスクを知って付き合おう
仮想通貨には、膠着した社会経済を動かす潜在的な起爆力となる可能性を秘めていますが、証券市場と同レベルの法的規制を厳密に整えることができなければ、いつまでたっても出資詐欺まがいの道具として悪用されるリスクから逃れることはできません。
アルゴリズム型ステーブルコインの弱点
最後にアルゴリズム型のステーブルコインの問題点を指摘しておきます。その先行例として、2022年5月に大暴落した「テラ」の破綻を確認しておきましょう。テラ・プロジェクトはドルやユーロに紐づけられたUST(テラUSダラー)、EUT(テラEU)などの「ステーブルコイン」と、そこから派生する2次トークンLUNAの2段構えになっています。
簡単にいうと、USTやEUTというのは、テラというパチスロ店で使うためのメダルのようなものです。メダルをドルやユーロで購入し、ゲーム後にはメダルを換金することができます。通常の「ステーブルコイン」の場合は、払い戻しに応じられるだけのキャッシュが準備されています。
ところが、「アルゴリズム型」はそうではありません。アルゴリズム型の「2次トークン」というのは、極端にいえば「子供銀行券」のお札と同じです。「2次トークンには直接の兌換性がなくても、ドルやユーロの価値と連動している1次トークンの担保があるから大丈夫」という主張は、一種の幻想に過ぎないのです。したがって、今後もアルゴリズム型ステーブルコインの事件は発生しうることを確認しておきましょう。
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