ビットコインの管理でよく耳にする言葉に「ウォレット」「公開鍵」「秘密鍵」という3つのキーワードがあります。「ウォレット」は、暗号資産の管理や移転のために利用されるサービスで、「公開鍵」と「秘密鍵」はそのサービスを利用するためのパスワードです。2つの鍵はビットコインを管理するために必要な情報なのですが、とりわけ「秘密鍵」の管理は非常に重要です。
猫道場もランキングに参加しています。応援よろしくおねがいするにゃ!
ウォレットと2つの鍵
ビットコインや仮想通貨の保管システムは、銀行口座に例えるなら、それぞれが以下のような役割をもっています。
・ウォレット…銀行口座 ・公開鍵…口座番号 ・秘密鍵…印鑑・キャッシュカードのパスワード
銀行口座から預金を引き出す場合、銀行窓口で「わたしはこの銀行に預金がある」と主張しても、口座番号がわからなければ話になりません。さらに、窓口で口座番号を伝えても、届出印がなければ出金することはできないし、パスワードを忘れていれば、キャッシュコーナーで出金することもできません。ウォレットもそれと同じです。「公開鍵」「秘密鍵」の一連のデータがなければ、ビットコインを移動させることができないのです。
ビットコインの保管における注意点
ハッキングのリスクを回避するウォレットの種類
ビットコインや仮想通貨は、常にハッキング被害のリスクにさらされています。実際に、これまで大規模なハッキング事件が度々発生していることから、ハッキング対策のために、取引所からビットコインを動かして保管しているトレーダーも多いでしょう。その保管システムが「ウォレット」です。
ウォレットには、オンライン(ネットと連結したシステム)とオフライン(ネットに連結しないシステム)の2種類がありますが、ハッキング対策としてはオフラインのほうがより効果が高まります。
ウォレットの2つの鍵
公開鍵とビットコインアドレス
公開鍵には、銀行の口座番号と同じ役割があります。ビットコインを受け取る際には、公開鍵を使って生成した公開鍵の「ウォレットアドレス(銀行口座番号)」を送り主に伝え、ビットコインを第三者に送金する際には、事前に相手の公開鍵のウォレットアドレスを聞き、そのアドレス先に送金します。
秘密鍵
秘密鍵はビットコインを出金する際に必要になるパスワードです。銀行口座における暗証番号と同じです。しかし、銀行口座の暗証番号とは決定的に異なる点があります。
銀行の暗証番号を忘れた場合には、通帳や届出印、本人を証明する運転免許証などを提示すれば、再発行してもらうことが可能です。ところが、秘密鍵は再発行できないのです。
秘密鍵を失うと永久に使用できなくなる
つまり、秘密鍵がわからなくなると、ビットコインを動かすことが永久に不可能になってしまうのです。このように、秘密鍵はビットコインの管理においてもっとも重要な情報なのですが、紛失してしまう人が少なからずいます。
あるデジタルフォレンジック会社の 調査によると、これまで発行されたビットコインのうち、秘密鍵の紛失により、400 万ビットコインが永久に失われている可能性があるということです。
秘密鍵を紛失して1770億円失った男
ビットコインで報酬を受け取ったその後
サンフランシスコ在住のプログラマー、ステファン・トーマスさんは2011年にビットコインの啓蒙ビデオを作成し、その報酬として7002ビットコインを受け取りました。
ところが、その先にとんでもない事件が待ち構えていました。トーマスさんは、ビットコインの入ったウォレットへの秘密鍵を「IronKey」というセキュリティ機能のついたUSBデバイスに保管したのですが、しばらくすると、パスワードがわからなくなってしまったのです。
困ったことに、「IronKey」は、パスワードを10回間違えるとデータを取り出すことが不可能になるシステムが組まれていました。トーマスさんは思いついた数列を8回試してみましたが、どれも合致しませんでした。
チャンスはあと2回残っているかもしれない
その後のトーマスさんの去就については伝えられていませんが、依然としてビットコインが凍結された状態であれば、2022年12月時点では、約1770億円相当の資産をみすみす失ったことになります。
しかし、ひょっとすると、トーマスさんにはパスワードを試すチャンスが、あと2回残っているかもしれません。いつの日か、奇跡が起きる可能性はあるのでしょうか。
ウォレットの秘密鍵を特定することは可能か
総当たりで秘密鍵にたどり着けるか
たとえば自転車のダイアル式の鍵であれば、「総当たり」で正解にたどりつくことが可能です。3列のダイアルであれば、(10×10×10)=(1000通り)をすべて試してみることは、現実的に可能です。しかし、ビットコインの場合は、そんな単純なものではありません。
秘密鍵のパスワードの組合せ…(2の256乗)通り
(2の256乗)は、地球上に存在する原子の数よりも遥かに多く、総当たりで正解に到達することは、物理的にほぼ不可能でしょう。したがって、総当たりで試すことは難しそうです。また、トーマスさんの例のように、誤入力の回数が限定されていれば、そもそも総当たり作戦は成立しません。
パスワードの推測
それなら、自分が使いそうなワードや数字に絞って探索する方法はどうでしょうか。いわゆる「辞書攻撃」のような方法です。断片的な記憶が残っていれば、ゴールに近づくことができるかもしれません
特別な文字や数字、単語を使っていたか 過去に使用したことのあるパスワードが含まれているかどうか 好きな料理、家族やペットの名前などのワード
わずかにチャンスは残されているが
秘密鍵を見つける作業は、太平洋の真ん中で落した指輪を探すようなものです。しかし、より多くのヒントがあれば、パスワードを復元できる可能性を高めることができます。
実際に、秘密鍵を突き止めるサービスが存在します。ヒントに基づいて特殊なスクリプトを用意し、秒間数百万通りの組み合わせをチェックし、正しいパスワードを探し当てることに成功した事例もあります。
ただし、秘密鍵の捜索を依頼した場合、かなりの費用を覚悟しなければなりません。それも確実にゴールに行きつく保証はありません。このような事態にならないためにも、転ばぬ先の杖で、まずもって秘密鍵を紛失しない手立てを事前に講じておくべきです。アナログですが、その方法とはズバリ「合鍵」です。合鍵の保管方法はいろいろ考えられるところですが、紙に書いて残すのが一番確実だと思います。
コメント